石川義一

石川義一：不協和音を奏でた異端の作曲家

石川義一（いしかわ よしかず）は、1887年4月13日に福島県相馬郡長塚村（現在の双葉町）で生まれ、1962年1月17日に74歳で亡くなった日本の作曲家です。

アメリカでの音楽修業

19歳で相馬中学を卒業後、代用教員を経てアメリカに渡りました。カリフォルニア州サクラメントで女性音楽家のベリングスにピアノと英語を学び、サンノゼ市のパシフィック大学音楽部でピアノと作曲を専攻し、1918年に卒業しました。

朝鮮での雅楽研究

1920年に帰国した石川は、朝鮮総督府社会課長として平安南道に赴任しました。その際、李王家からの依頼で朝鮮雅楽の研究に取り組み、15年もの歳月をかけて283曲、五千ページに及ぶ膨大な楽譜を五線譜に書き写すという偉業を成し遂げました。

音楽家としての苦悩

1928年に職を辞して帰国した石川は、自作のピアノ曲と共に、レオ・オーンスタインの作品を演奏しました。彼はオーンスタインを「未来派音楽」として紹介しましたが、実際にはモダニズムの作曲家であり、その認識には誤りがありました。オーンスタインの影響を受けた石川は不協和音を多用した音楽を作曲しましたが、当時の楽壇からは異端として受け入れられず、苦悩を味わいました。

多様な職歴と晩年

李王職の嘱託として朝鮮雅楽の研究を続ける傍ら、第二次世界大戦中には品川中学の数学教員、戦後は丸の内警察署の英語通訳など、様々な職業に従事しながら生活費を稼ぎ、作曲活動を続けました。1956年に脳溢血で倒れ、6年後の1962年に74歳でその生涯を閉じました。

主要な作品

石川義一は、数多くのピアノ曲、管弦楽曲を作曲しました。以下にその代表的な作品を記します。

交響詩ハ長調「天の岩戸」（1918年）
ピアノ曲「組曲・河」（1927年）
ピアノ曲「音の日本史」第一篇（1929年）
ピアノ曲「人物組曲」（1930年）
ピアノ曲「ルンペンの夢」（1931年）
ピアノ曲「観音の絵に題す」（1931年）
ピアノ曲「朝鮮雅楽《万波停息之曲》」（1931年）
ピアノ曲「音の日本史」第三篇《高天ヶ原》（1931年）
ピアノ曲「百ドル紙幣狂想曲」（1932年）
ピアノ曲「音の日本史」第四篇《天の岩戸》（1932年）
ピアノ曲「立ち枯れ巨木三態」（1933年）
ピアノ曲「渦巻」（1933年）
ピアノ曲「音詩《古池や蛙飛び込む水の音》」（1934年）
ピアノ・ソナタ「合掌」（1935年）
ピアノ曲「前奏曲」（1935年）
ピアノ曲「朝の献立」（1935年）
ピアノ曲「日本風のソナタ」（1936年）
ピアノ曲「海辺の大あれ」（1936年）
ピアノ曲「はがき文三題」（1936年）
ピアノ曲「凱旋おどり」（1936年）
ピアノ曲「音の日本史」第七篇《埴輪は語る》
ピアノ曲「支那音楽」
ピアノ曲「花一輪」（1949年）
ピアノ曲「別れ」（1949年）
管弦楽曲「重光の曲」（1954年）

参考文献

秋山邦晴「昭和の作曲家たち」（みすず書房、2003年）

石川義一の音楽は、その生涯と同様に、波瀾に満ちたものでした。彼の作品は、不協和音を多用し、当時の音楽界からは異端とみなされましたが、その独創性と情熱は、今日においても再評価されるべきでしょう。

もう一度検索