石田正弘

石田正弘：天才テナー・サクソフォーン奏者の人生

石田正弘（いしだ まさひろ）は、日本の音楽シーンにおける重要な人物であり、特にテナー・サクソフォーン奏者として名を馳せました。彼は1935年に東京の池袋に出生し、持ち前の音楽の才能は若い頃から顕れました。石田は、ハナ肇とキューバン・キャッツ（後のクレージーキャッツ）の初期メンバーであり、彼の演奏スタイルやクレイジーなキャラクターから「クレージーになりそこなった男」と称されました。また、彼には別名の「石田弘」や渾名として「ポン公」の名も存在します。

幼少期と音楽への目覚め

石田は1944年に起きた空襲で父親を失い、その後は母子家庭で育ちました。高校時代は野球部に所属していましたが、慶應義塾大学の受験に失敗し、家業の寿司屋の出前持ちを始めることになりました。さらに、国鉄スワローズの入団試験に合格し、プロ野球選手になる夢を抱いていましたが、肋膜の病にかかり引退、その後は寿司屋での仕事に戻ります。

音楽への情熱は常にあり、兄の影響でハワイアンバンドに参加しベースを演奏したことで、音楽の楽しさに目覚め、テナー・サクソフォーンを学ぶことを決心しました。彼は松本英彦の指導を受けつつ、アルト・サクソフォーンやピアノも独自に習得しました。

クレージーキャッツとその後の波乱

1955年、スカウトされてキューバン・キャッツに参加し、仲間と共に音楽の新しい時代を切り開いていきました。しかし、私生活では麻薬に手を染め、特に1958年には妻の死がトリガーとなり、より深く薬物の世界に引き込まれていきます。彼はその後クレージーキャッツを脱退し、薬物の運び屋として逮捕され、2年間の服役生活を余儀なくされました。

出所後は「石田弘」の芸名で小倉のクラブで活動を再開しますが、私生活ではさらなる悲劇が待ち受けています。彼は息子を交通事故で失い、その悲しみの中で渡米という選択をしますが、ラスベガスでのギャンブルにより全てを失って帰国。その後はアルコールに溺れるようになり、広島を経て小倉に戻ります。

最晩年と死

音楽から離れた時期もありましたが、1985年のインタビューでは未だに自信を持って自らの技術を語る石田の姿がありました。しかし、肝硬変が悪化し、自宅で急死するという運命が待っていました。49歳という若さでの死は、多くの人々に衝撃を与えました。発見されたのは死後2日経ってからでした。

彼の死後、ハナ肇は「薬物がなければ、石田は日本を超える存在になったかもしれない」と惜しみました。また、映画化の構想もあったとされています。石田正弘の生涯は、才能と波乱の人生が交錯する、音楽史における重要な物語の一つです。

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