アルト・サクソフォーン

アルト・サクソフォーン（アルト・サックス）

アルト・サクソフォーンは、ベルギーの楽器設計者アドルフ・サックスによって1840年代に発明され、1846年に特許を取得した木管楽器です。サクソフォーン族の中でも最も一般的な楽器であり、変ホ調（E♭）で調律されています。テナー・サクソフォーンよりも小型で、ソプラノ・サクソフォーンよりは大きいサイズです。

特徴

アルト・サックスは、ポピュラー音楽、コンサート・バンド、室内楽、ソロ・レパートリー、軍楽隊、マーチングバンド、そしてジャズなど、幅広いジャンルで活躍しています。サクソフォーン属の楽器は、種類が異なっても運指が共通であるため、奏者は他の種類のサクソフォーンも比較的容易に演奏できます。

ジャズの発展において、アルト・サックスは特に重要な役割を果たしました。チャーリー・パーカー、キャノンボール・アダレイ、ジョニー・ホッジスなど、数多くの著名なジャズミュージシャンがアルト・サックスを愛用し、その音楽に大きな影響を与えました。クラシック音楽におけるアルト・サックスの役割は限定的ですが、マルセル・ミュール、シーグルト・ラッシャーといった演奏家たちが、その可能性を追求してきました。

音域

アルト・サクソフォーンの音域は、実音でD♭3（中央ハの下のD♭）からA♭5（ハイF♯キーを備えた楽器ではA5）までです。特殊な奏法を用いることで、さらに音域を広げることも可能です。記音での標準的な音域はB♭3からF6（もしくはF♯6）までで、さらに高音域であるアルティッシモ音域も存在しますが、高度な技術が求められます。

アルト・サクソフォーンは移調楽器であり、楽譜に書かれた音よりも長6度低い音が出ます。

代表的な奏者

ジャズ

チャーリー・パーカー
キャノンボール・アダレイ
ジョニー・ホッジス
ポール・デスモンド
ベニー・カーター
オーネット・コールマン
ボビー・ワトソン
エリック・ドルフィー
アート・ペッパー
ケニー・ギャレット

クラシック

ティモシー・マカリスター
ジャン＝イヴ・フルモー
ローレンス・グオゼス
ドナルド・シンタ
ハーヴェイ・ピッテル
アルノ・ボーンカンプ

主な製造業者

ビュッフェ・クランポン
KHS/ジュピター
コーン・セルマー
セルマー・パリ
ヤマハ
ヤナギサワ

アルト・サックスの価格は、初心者向けの安価なモデルで3万円台から、プロ向けの高級モデルでは80万円を超えるものまで幅広く存在します。

クラシック音楽の作品

アルト・サックスは、オーケストラやピアノとのソロ作品、ウィンド・シンフォニーなど、多くのクラシック作品で用いられています。

ジャック・イベール：室内小協奏曲
アレクサンドル・グラズノフ：協奏曲変ホ長調、サクソフォーン四重奏曲変ロ長調
ジョルジュ・ビゼー：『アルルの女』第2組曲より「間奏曲」「メヌエット」
リヒャルト・シュトラウス：家庭交響曲
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ：舞台管弦楽のための組曲、ジャズ組曲第1番、ジャズ組曲第2番
モーリス・ラヴェル：ムソルグスキー「展覧会の絵」オーケストラ版
アルバン・ベルク：ぶどう酒、ルル、ヴァイオリン協奏曲
セルゲイ・ラフマニノフ：交響的舞曲
* ジョージ・ガーシュウィン：ラプソディ・イン・ブルー、パリのアメリカ人

これらの作品以外にも、数多くの作曲家がアルト・サックスをオーケストラや室内楽で効果的に使用しています。

アルト・サックスは、その表現力豊かな音色と幅広い音楽性で、多くの人々に愛される楽器です。

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