石田義久

石田義久（いしだ よしひさ）は、1944年5月19日生まれ、広島県三原市出身の日本の元陸上競技選手です。砲丸投の元日本記録保持者として知られ、現役時代には投擲競技の第一人者として国内外の大会で活躍しました。

石田氏の陸上競技における才能は、高校時代から顕著でした。近畿大学附属高等学校在学中の1962年6月には、全国高校近畿地区予選会で砲丸投において16メートル69センチの高校新記録を樹立し、大きな注目を集めます。また、インターハイでは円盤投で準優勝を果たすなど、この頃から複数種目での素質を示していました。

1963年に日本大学へ進学後、その実力はさらに開花します。大学3年次の1965年には、第49回日本選手権の男子ハンマー投で63メートル32センチを投げ、初優勝を飾りました。ハンマー投ではその後も日本選手権で1969年、1972年、1973年と計4回の優勝を経験しています。さらに、専門とする砲丸投でも1964年、1966年、1967年に日本選手権を3度制覇。円盤投でも1966年の日本選手権で頂点に立つなど、砲丸投、ハンマー投、円盤投という投擲三種目すべてで日本チャンピオンとなった数少ない選手の一人です。その多才さから、当時の陸上界で「投擲のマルチプレーヤー」として名を馳せました。

大学卒業後、1967年に東洋工業に入社。同年開催されたユニバーシアード東京大会のハンマー投では、64メートル94センチの記録で優勝を果たし、国際舞台でも実力を証明します。1968年7月にはハンマー投で67メートル74センチの日本新記録をマークするなど好調を維持しましたが、同年開催されたメキシコシティオリンピックではハンマー投で11位という結果でした。その後も競技を続け、1972年にはハンマー投において、日本人選手として二人目となる70メートルの壁を破る70メートル54センチの大記録を樹立しました。この記録は、長らく日本のハンマー投界において燦然と輝く記録となります。同年、ミュンヘンオリンピックのハンマー投日本代表に選ばれ、二大会連続のオリンピック出場を果たしました。

現役を引退した石田氏は、東洋工業を退社後、教育者・指導者としての道を歩みます。東海大学に転じ、体育学部競技スポーツ学科の専任教授として教鞭を執る傍ら、東海大学陸上競技部の監督や部長も務め、多くの後進育成に尽力しました。また、日本学生陸上競技連合の強化委員をはじめとする陸上界の要職を歴任し、競技の普及・発展に貢献。近年も、日本陸上競技連盟女子委員会が開催するハンマー投や棒高跳の講習会で講師を務めるなど、現場での指導にも情熱を注いでいます。2001年にはアジアジュニア選手権日本代表選手団の副団長を務め、若い世代の育成にも深く関わりました。長年の功績が認められ、2005年には日本学生陸上競技連合功労章を受章しています。

選手時代に石田氏が樹立した記録の中には、現在もその価値を保っているものがあります。1967年にマークした砲丸投16メートル69センチ、そして1972年に記録したハンマー投70メートル54センチは、いずれも現在まで広島県記録として残っています。特にハンマー投の70メートル54センチという記録は、現在も日本歴代5位に位置しており、その水準の高さを示しています。

競技者としては、同時代のハンマー投のトップ選手であり、後にハンマー投界のレジェンドとなる室伏重信氏とは公私にわたり親交が深く、互いに切磋琢磨する間柄でした。石田氏は、指導書として『Super陸上 VOL.9「砲丸投」』を著しており、自身の経験や技術を後世に伝えています。

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