石錐

石錐（せきすい、いしきり）は、縄文時代から使用された剥片石器の一種であり、獣皮や樹皮といった素材に穴を開けるために用いられた穿孔具です。現代の工具で言うところの携帯ドリルに相当します。

概要

石錐の材料としては、黒曜石、チャート、粘板岩、頁岩などが一般的です。製作方法は、主に打製石器の技法が用いられますが、先端のドリルとして機能する部分には、磨きをかけるなど、より精密な加工が施されることが多いのが特徴です。

石錐は、その名称が示す通り、石を材料として作られた錐（きり）であり、回転させることで穴を穿つというシンプルな構造を持っています。しかし、素材の選択や先端の加工技術には、当時の人々が持つ高度な知識と技術が反映されています。

石錘との区別

石錐と混同されやすいものとして、石錘（せきすい）があります。石錘は、網漁で使用される漁具の一種であり、網を沈めるためのおもりとして用いられます。石錐と石錘は、名称が同じであるものの、用途も製作方法も全く異なります。

石錘は、網に取り付けられることを前提としているため、一般的に、中央に紐を通すための穴が開けられています。また、水中で安定するように、比較的丸みを帯びた形状をしていることが多いです。一方、石錐は、手で持って回転させることを前提としているため、握りやすい形状であり、先端が尖っているという特徴があります。

石錐と石錘を区別するために、石錐を「いしきり」と呼称する場合もあります。これは、石錐が穴を開けるための道具であることを明確にするためです。

まとめ

石錐は、縄文時代の人々の生活において、欠かすことのできない道具の一つでした。獣皮を加工して衣服を作ったり、木材に穴を開けて住居を建てたりと、様々な用途に用いられました。石錐の存在は、当時の人々が、自然の素材を巧みに利用し、生活を豊かにするための工夫を凝らしていたことを物語っています。

石錐は、考古学的な研究においても重要な意味を持っています。石錐の形状や材質、加工技術などを分析することで、当時の人々の生活様式や技術水準を知ることができます。また、石錐が出土した場所や、他の遺物との組み合わせなどを調べることで、当時の社会構造や交易ルートなどを推測することも可能です。

参考文献

斎藤忠 2004年『日本考古学用語辞典』学生社 p.21 ISBN 4311750331

関連項目

剥片石器
* ドリル (工具)

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