破産法

破産法について

破産法（はさんほう）は、平成16年6月2日に法律第75号として制定された、倒産法制の根幹をなす日本の法律です。この法律は、清算型の倒産手続きである破産に関する具体的な手続きやルールを定めています。破産手続きの詳細については、破産の項目で詳しく解説されています。ここでは、日本における破産法の主な特徴や歴史的背景について掘り下げていきます。

現行の破産法が施行される以前に存在した、同名の法律（旧破産法）については、破産法 (1922年)の項目をご参照ください。

立法主義

日本の破産法は、以下の3つの主要な立法主義に基づいて構成されています。

一般破産主義

破産手続きの対象となる者の範囲を定める原則として、一般破産主義と商人破産主義の2つがあります。一般破産主義は、商人だけでなく、非商人にも破産能力を認める立場です。一方、商人破産主義は、破産能力を商人に限定します。日本の破産法では、一般破産主義が採用されています。

フランスでは、歴史的に商人の自治法規として発展してきた背景から、商人破産主義が伝統的に採用されてきました。しかし、現在では法人にも破産能力が認められています。日本においても、かつてはフランス法の影響を受け、商人破産主義が採用されていた時期がありました。

非懲戒主義

懲戒主義とは、破産手続きの開始決定によって、破産者の公的な資格や私的な権利を制限する立場です。一方、非懲戒主義は、そのような制限を設けない立場です。日本の破産法は、原則として非懲戒主義を採用しており、破産手続きの開始によって公法上の資格が制限されることはありません。ただし、実際には、他の法律によって、破産者が特定の職業に就くことが制限される場合があります。例えば、他人の財産を管理するような職業（弁護士、税理士など）には一定の制限が加えられています。しかし、破産法には免責や復権に関する規定があり、免責許可決定が確定した場合や復権した場合には、これらの資格制限は解除されます。

免責主義

免責主義とは、破産者が自然人の場合に、残りの債務について破産者の責任を免除する立場です。これに対して、非免責主義は、債務を免除しない立場です。つまり、破産手続きの終了と債務の消滅は必ずしも結びつきません。日本では、1952年の法改正まで非免責主義が採用されていましたが、アメリカ法の影響を受けて免責主義に移行しました。ただし、一部の債務については免責されない場合があります。また、個人の破産手続きにおいては、債権者への配当よりも、免責を得るために破産手続きを利用するケースがほとんどです。

沿革

日本における破産手続きは、江戸時代の御定書百箇条における債権者による身代限と、債務者による分散の手続きに起源を持ちます。ただし、前者は強制執行、後者は私的整理に近いものでした。明治初期には、これらの制度や慣習法、外国法を参考に、華士族平民身代限規則などの立法が行われましたが、統一的な破産手続きを定めるものではありませんでした。

その後、近代的な統一法典の必要性から、フランス法をモデルとして1890年に商法（明治23年法律第32号）が制定され、その第三編に破産手続きに関する規定が設けられました。この商法に規定があったことからもわかるように、対象は商人に限られており、非商人については家資分散法（明治23年法律第69号）によって規律されていました。

現行の商法（明治32年法律第48号）が施行されたことにより、旧商法は廃止されましたが、第三編はそのまま残り、家資分散法と共に破産に関する規定を定めていました。その後、ドイツ法を参考に、1922年に破産法（大正11年法律第71号、旧破産法）が制定され、翌1923年に施行されました。この立法により、商人と非商人を区別しない一般破産主義が採用されました。これにより、旧商法第三編と家資分散法は廃止されました。また、同時にオーストリア法を参考にした和議法（大正11年法律第72号）も制定されました。

さらに、1952年には、アメリカ法の影響を受け、会社更生法が制定されるとともに、破産法に免責制度が導入されました。これにより、個人の破産は単なる財産清算だけでなく、破産者の経済的更生を目的とする制度へと変化しました。その後、企業の大規模な倒産や、消費者破産の増加に伴い、破産手続きと免責手続きが一体化されていないことによる問題点が指摘されるようになりました。また、租税債権が優遇されている一方で、労働債権が低い地位に置かれていることも問題視されていました。これらの問題を解決するため、倒産法制の全面的な改正が行われ、2004年に新たな破産法（平成16年法律第75号）が制定され、2005年1月1日から施行されました。

構成

現行の破産法は、以下の章で構成されています。

第一章：総則
第二章：破産手続の開始
第三章：破産手続の機関
第四章：破産債権
第五章：財団債権
第六章：破産財団の管理
第七章：破産財団の換価
第八章：配当
第九章：破産手続の終了
第十章：相続財産の破産等に関する特則
第十一章：外国倒産処理手続がある場合の特則
第十二章：免責手続および復権
第十三章：雑則
第十四章：罰則

関連項目

和議法
民事再生法 - 民事再生手続
会社更生法 - 会社更生手続
会社法 - 特別清算

外部リンク

* 『破産法』 - コトバンク

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