硫酸ジエチル

硫酸ジエチルとは

硫酸ジエチル（Diethyl sulfate）は、化学式C4H10O4Sで表される、硫酸エステルの一種です。特徴的なペパーミント臭を持つ無色の液体で、有機合成化学において重要な役割を果たしますが、同時に高い毒性と発がん性を持つため、取り扱いには厳重な注意が必要です。

性質と安全性

硫酸ジエチルは、その強力なエチル化作用により、様々な化合物にエチル基を導入するアルキル化剤として機能します。特に、フェノール類、アミン、チオールなどとの反応性が高く、これらの化合物のエチル化に広く用いられます。

しかし、この強力なエチル化作用は、生体内のDNAに対しても作用し、DNAをエチル化することが知られています。このDNAへの作用が発がん性の原因と考えられており、動物実験では発がん性が確認されています。国際がん研究機関（IARC）では、ヒトに対する発がん性の可能性がある物質としてGroup2Aに分類されており、人に対しても発がん性があると考えられています。

日本の消防法では、危険物第4類・第3石油類に該当し、毒物及び劇物取締法では劇物として扱われます。また、船舶安全法や航空法でも毒物としての規制対象となっています。ウサギを用いた動物実験では、眼や皮膚に対して壊死を含む重篤な腐食性を示すことが確認されており、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。

水生生物に対しては有害ですが、急速に分解される性質を持ち、生物蓄積性は低いとされています。しかし、環境への放出も極力避けるべきです。

用途

硫酸ジエチルは、その強力なエチル化作用を活かして、医薬品、染料、農薬、界面活性剤（特に第4級アンモニウム塩）など、多岐にわたる有機化合物の原料や中間体として使用されます。具体的には、エチル基を導入することで、これらの化合物の性質を変化させたり、合成を容易にしたりするために用いられます。

まとめ

硫酸ジエチルは、有機合成化学において非常に有用な試薬ですが、その高い毒性と発がん性から、取り扱いには十分な注意が必要です。適切な保護具を着用し、安全な環境下で使用することが不可欠です。

参考資料

Buck, J. R. Park, M.; Wang, Z.; Prudhomme, D. R.; Rizzo, C. J. "9-Ethyl-3,6-Dimethylcarbazole (DMECZ)". Organic Syntheses (英語). 77: 153.
Shammi Theodore and P.S.T. Sai (2001). “Esterification of Ethanol with Sulfuric Acid: A Kinetic Study”. Canadian Journal of Chemical Engineering 79: 54. doi:10.1002/cjce.5450790109. http://www.cjche.ca/journal/issues/Feb%2001/Abstract%2054.pdf.

外部リンク

WebBook page for C4H10SO4
International Chemical Safety Card 0570
* IARC Monograph: "Diethyl sulfate"

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