碧血剣

金庸の武侠小説『碧血剣』

『碧血剣』（へきけつけん）は、中国を代表する小説家、金庸による武侠小説の一つです。1956年に香港の新聞『香港商報』で連載が開始され、多くの読者を魅了しました。物語の舞台は17世紀半ば、明朝が滅亡へと向かう激動の時代。史実を基にした重厚な世界観の中で、主人公の復讐劇、武術の修行、そして恋愛模様が描かれます。

物語の背景

物語は、明朝末期、名将として知られた袁崇煥（えん すうかん）が、濡れ衣を着せられ処刑されるという悲劇から始まります。その遺児である袁承志（えん しょうし）は、父の無念を晴らすため、武術の修行に励むことを決意します。彼は華山派に入門し、さらに、かつて武林に名を馳せた侠客、金蛇郎君（きんじゃろうくん）の武術も習得していきます。

主な登場人物

袁承志（えん しょうし）: 主人公。父の仇を討つため、武術を修行する。金蛇郎君の武術を継承し、卓越した武術家へと成長する。
袁崇煥（えん すうかん）: 袁承志の父。明朝の名将であったが、讒言により処刑される。
夏青青（か せいせい）: 金蛇郎君の娘。男装の美少女で、袁承志を慕う。わがままで癇癪持ちな一面も持つ。
金蛇郎君（きんじゃろうくん）: 本名は夏雪宜（か せつぎ）。武林の奇侠。過去の因縁から復讐を誓うが、恋に落ちるなど、複雑な背景を持つ。すでに故人であるが、物語に大きな影響を与える。
穆人清（ぼく じんせい）: 華山派の総帥。袁承志の師匠。
木桑道人（もくそうどうじん）: 穆人清の友人。軽功と暗器の達人。袁承志に武術を授ける。
程青竹（てい せいちく）: 盗賊団の首領。後に袁承志の配下となる。
崇禎帝（すうていてい）: 明朝の最後の皇帝。疑心暗鬼から袁崇煥を処刑してしまう。作中では暗君として描かれる。
阿九（あきゅう）: 程青竹の弟子。出自に秘密を持つ美少女。『鹿鼎記』にも登場。
李自成（り じせい）: 農民反乱軍のリーダー。明朝を滅ぼす。
* ホンタイジ: 清の皇帝。袁崇煥を処刑させた張本人。

物語の展開

物語は、袁承志が武術を修行し、父の復讐を誓うところから始まります。彼は華山派に入門し、師の穆人清から武術を学び、さらに金蛇郎君の残した武術も習得します。江湖に出た袁承志は、様々な人々との出会いを通して、成長していきます。

物語の中盤では、袁承志が李自成率いる農民軍に協力し、明朝を倒すために戦います。しかし、李自成が皇帝になると、性格が変わり、袁承志は失望します。一方、袁承志は清のホンタイジ暗殺を計画しますが、ホンタイジの人柄に触れ、心が揺れ動きます。

物語の終盤では、袁承志は華山に戻り、金蛇郎君、五毒教、温家との因縁に終止符を打ちます。

『鹿鼎記』との関連

『碧血剣』は、同じく金庸の小説である『鹿鼎記』と世界観を共有しており、一部の登場人物が共通して登場します。例えば、阿九や何鉄手などが挙げられます。

書誌情報

日本では、徳間書店から全3巻の単行本が、また、徳間文庫から全3巻の文庫本が出版されています。

映像化作品

これまでに何度も映画化、テレビドラマ化されています。近年では、2007年に中国でテレビドラマが制作され、日本でも放映されました。

まとめ

『碧血剣』は、歴史とフィクションが融合した、波乱万丈の武侠小説です。主人公の復讐劇、武術の修行、そして恋愛模様など、様々な要素が絡み合い、読者を飽きさせません。金庸の作品の中でも、特に史実に基づいた要素が強い作品であり、歴史ファンにもおすすめできる一冊です。

もう一度検索