碧蹄館の戦い

碧蹄館の戦い：文禄・慶長の役における日本軍の勝利

碧蹄館の戦いは、文禄2年1月26日（1593年2月27日）に朝鮮半島の碧蹄館（現在の京畿道高陽市徳陽区碧蹄洞一帯）周辺で繰り広げられました。平壌を奪還した勢いに乗り、漢城（現ソウル）を目指して南下する李如松率いる明軍に対し、小早川隆景らが率いる日本軍が迎撃し、これを打ち破った戦いです。

戦闘までの経緯

明軍による平壌陥落や大友吉統の逃亡などにより、一時混乱状態にあった日本軍は、朝鮮半島北部各地に展開していた諸将を漢城に集結させ、戦力の立て直しを図りました。軍議では、石田三成や大谷吉継らが籠城戦を主張する一方で、小早川隆景や立花宗茂らが迎撃戦を主張しました。その結果、宇喜多秀家を総大将、小早川隆景を先鋒大将とし、石田、大谷は漢城に残り兵力をほぼ二分する形で碧蹄館の戦いに臨むこととなりました。

開戦に先立ち、李如松は漢城攻略の作戦会議を開き、査大受を偵察隊として派遣しました。偵察隊は、日本軍偵察隊に勝利したものの、この勝利報告と「日本軍の精鋭は平壌で壊滅し漢城には弱兵が残るのみ」という朝鮮人の情報に基づき、李如松は5,000の兵と共に開城を出発しました。

戦闘の経過

日本軍は迎撃の先鋒を立花宗茂・高橋直次兄弟とし、午前2時頃、森下釣雲と十時惟由らの軽兵が敵状を偵察。敵軍が未明に進軍すると予測し、午前6時頃碧蹄館南面の礪石嶺北側二箇所に布陣しました。少数兵による陽動作戦で明軍を誘致し、越川峠南面にて交戦を開始。立花宗茂・高橋直次の本隊は、左側面から敵後詰の朝鮮軍に奇襲を仕掛け、これを撃退しました。その後、立花軍は7千の敵軍と遭遇し奮戦しますが、敵軍は次々と新手を投入し、兵を入れ替えてきました。

激戦の中、十時惟道らが中央突破を敢行し、敵陣を混乱させましたが、惟道は李如梅の毒矢を受け戦死。寡兵の立花・高橋勢は奮戦し、敵軍を撃退しました。その後、小早川隆景らの日本軍先鋒隊が到着し、疲労の深い立花勢を後方に下げ、西方の小丸山に移陣しました。この戦端が開かれた時点では日本軍本隊はまだ漢城に在りました。

午前10時頃、高陽原に明軍が三隊の陣形で押し寄せました。日本軍先鋒隊は全軍を碧蹄館南面の望客硯に埋伏させ、同時に三方包囲策を進行。隆景軍の先陣が後退を始めると、明軍は追撃に移りますが、井上景貞隊が側背から攻撃し、明軍は大混乱に陥りました。その機を逃さず立花宗茂が鉄砲隊を率いて敵陣に強襲、小早川秀包らが右方から側撃、隆景本隊も正面より進撃し、明軍前衛を撃破して李如松の本隊に迫りました。この際、李如松自身も落馬する場面がありましたが、側近に救出されました。しかし、楊元率いる明軍の援軍が到着し、態勢を立て直すと、日本軍は包囲される形となり、壊走を始めました。

正午頃には戦いの大勢は決し、日本軍は退却する明軍を追撃しましたが、深追いは避けました。明軍は開城まで撤退しました。

明軍の被害

碧蹄館は騎兵の機動力を活かせない狭隘な渓谷であり、かつ雨で泥濘地と化していました。このため、明軍は騎兵中心の編成であったにもかかわらず、その機動力を発揮できず、甚大な損害を被りました。

その後の影響

この戦いの敗北により、李如松は戦意を喪失し、明軍は開城、さらに平壌まで撤退しました。これにより、武力による日本軍撃退の方針を諦め、講和交渉へと転換することとなります。一方、日本軍も兵糧面で甚大な損失を出したため長期戦が難しくなり、石田三成、小西行長らは明との講和交渉を開始しました。

日本・明両軍の編成

日本軍

総大将：宇喜多秀家
先鋒隊大将：小早川隆景
兵力：約20,000

明軍

大将：李如松
* 兵力：約5,000（平壌攻撃時は43,000余り）

もう一度検索