李如松

李如松（り じょしょう）

李如松（1549年 - 1598年）は、明末の武将で、字は子茂、号は仰城、諡は忠烈。遼東鉄嶺衛の出身で、李成梁の長男として生まれました。彼の出自については、朝鮮からの移民の末裔であるという見解が、鉄嶺市政府や一部の研究者によって示されています。また、朝鮮系中国人とも称されることもあります。

生涯

1574年に父の跡を継ぎ鉄嶺衛都指揮同知となり、1580年には寧遠伯を世襲しました。その後、1584年に山西総兵、1585年に京城巡捕都督僉事、1588年に宣府総兵と、数々の要職を歴任しました。

1592年には哱拝の乱の鎮圧に功績を挙げ、その直後に始まった文禄の役（第一次万暦朝鮮の役）では、防海禦倭総兵官として朝鮮への援軍を率いました。1593年1月には平壌城に拠る小西行長の軍勢を急襲し、一時的に落城寸前まで追い込みました。しかし、小西軍が撤退を開始すると、追撃戦の途上で碧蹄館の戦いにて、小早川隆景や立花宗茂らの軍勢に敗北を喫し、平壌に撤退しました。その後、積極的な攻勢に出ることはなく、和議による事態の収拾を図りました。同年9月には、朝鮮軍務経略の宋応昌とともに帰国しました。

李如松は、慶長の役（第二次万暦朝鮮の役）には参戦していません。1597年には、遼東の静遠堡などが東西虜の侵攻を受けたため、遼東総兵として着任し、太子太保を加えられました。1598年4月、城外で伏兵に遭い戦死しました。

李如松は、その傑出した才能から「これと語れば、みな『娓娓精当』」と評価され、万暦帝からの信頼も厚く、その死は深く悲しまれました。死後には、少保・寧遠伯を追贈され、諡を贈り、祠が建てられ、加葬営葬が命じられ、子も取り立てられるなど、手厚い処遇を受けました。

朝鮮での評価

李如松は、李氏朝鮮時代には、その功績を称え、頌徳碑や生祠堂が建てられようとしました。また、平壌には武列祠が作られ、肖像画が掲げられて祭祀が執り行われ、1599年には宣武祠も建てられました。宣祖は彼を「再造之恩」と称え、国を蘇らせた恩人として崇めましたが、現代の韓国では、必ずしも救国の恩人として記憶されているわけではありません。

『壬申倭乱と韓中関係』の著者である韓明基は、「再造之恩」の強調は、権威が失墜していた宣祖や大臣が、明軍の助けによって危機を克服できたことを強調し、自身の権威を回復させるための政治的な意図があったと分析しています。

また、李如松を救国の恩人とするのは、官製の記録に限られており、大衆の説話では、彼のあくどい面が強調されています。安東大学教授の任在海は、李如松の説話を4つに分類しています。

1. 朝鮮の使者が明へ行き、屈辱を受けたにもかかわらず、ついに李如松に援軍を要請した。
2. 李如松が朝鮮から優れた人物が排出されるのをねたみ、良好な風水の流れを断った。
3. 名もない少女が李如松の悪行を阻止し、朝鮮から追い出した。
4. 良好な風水の流れをむやみに断ったので、自らの祖父の土地の良好な風水の流れまで断ってしまい、ついに自らも滅んだ。

これらの説話からは、李如松が、平壌城の戦闘で、明軍の戦果を偽装するために、朝鮮の民衆の首を切り落とし、日本軍の首に見せかけたという疑惑も伝えられています。この行為は、明軍内でも問題視され、調査が行われました。また、李如松の平壌城攻撃によって、焼死や水死した朝鮮人が1万人程度いたという記録も残っており、老斤里事件を凌ぐ虐殺が行われたとも指摘されています。

大衆の説話では、李如松は名もない少女や若者、老人、山神などによって朝鮮から追い出されたとされ、朝廷の哀悼一色だった状況とは対照的に、「李如松は自分で自分の首を絞めたうえに、彼の子孫まで没落させた」と高笑いするような話も伝えられています。任在海は、これらの説話から、「大国と小国の間の、従属関係や血縁関係や血盟関係などでは、互恵平等の原則に基づく善隣関係を維持できないことを認識」していたと述べています。

系譜

父：李成梁
叔父：李成材
* 弟：李如柏・李如楨・李如樟・李如梅・李如梓・李如梧・李如桂・李如楠

（『明史』李如松伝による）

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