磁気治療器

磁気治療器は、磁力線を利用して疾病の予防、改善、治療を目的とする医療機器です。大きく分けて交流磁気治療器と直流磁気治療器の2種類が存在します。

交流磁気治療器

交流磁気治療器は、主に医療機関で使用される据え置き型です。先端部の磁気は約80ミリテスラ程度です。昭和医科大学の研究チームは、交流磁気治療器を用いて前骨髄性白血病細胞由来の培養株細胞（HL-60）に対し、磁気照射を行った実験で、がん細胞のアポトーシスが誘導されたと報告しています。この研究は、交流磁気照射によるがん治療の可能性を示唆するものとして期待されています。

直流磁気治療器

直流磁気治療器は、磁気ネックレスや磁気ブレスレットなど、直流磁気を使用した治療器です。ネックレスやブレスレットのほか、絆創膏や下着に粒状の強力な永久磁石を内蔵し、磁力によって疾病の予防、改善、治療を目指します。通常、装身具や下着に似た形状の保持部分に、高強度の磁力線を発生する永久磁石が複数埋め込まれており、使用者の体表面近くに常時接触します。磁力の強度は様々ですが、大手の商品では一粒あたり80〜180ミリテスラ（800〜1,800ガウス）の強力な磁石が数十個含まれているものもあります。

直流磁気治療器の仕組みとして、「磁力が血液中のイオンを増やし、イオンが神経に働きかけることでマッサージ効果が発生する」といった説明がなされることがあります。中川恭一の研究によれば、70ミリテスラの磁気ネックレスと130ミリテスラの磁気ネックレスでは有効率にほとんど差が見られませんでしたが、20ミリテスラ（200ガウス）になると有効率が著しく低下したと報告されています。このことから、直流磁気治療器には一定以上の磁気の強さが必要であると考えられています。

科学的根拠

アメリカがん協会は、「公表されている科学的証拠からは、磁気治療器による痛みの解消や病気の治療効果は支持されない」としています。また、アメリカ食品医薬品局（FDA）は、磁気治療器具の医療目的での販売を禁止しています。

明治大学科学コミュニケーション研究所の調査では、磁気治療は未科学から発展途上の科学の範疇と総評されています。国内の研究では肯定的な結果と否定的な結果の両方が存在しますが、海外の研究では有効性が認められていません。この理由として、肩こりという概念の特殊性が指摘されています。「コリ」の解消を測定した国内の研究と、「痛み」の解消を測定した海外の研究では、異なる構成概念を測定している可能性があり、有効性の測定結果に差異が生じるなど、研究に影響を与えていると考えられます。

磁気治療器に関しては、今後のさらなる研究による科学的根拠の確立が期待されます。

関連項目

磁力線
ピップ株式会社
阿蘇製薬
TDK
電位治療器

外部リンク

じしゃく忍法帳 TDK 第117回「磁気治療器と磁石」の巻 （日本語）
磁気と生体 第16回「東洋医学と磁気（2）」 （日本語）
Magnet Therapy: A Skeptical View Stephen Barrett, M.D. September 25, 2002 （英語）
* Skeptic Dictionary "magnet therapy" （英語）

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