祇園大塚山古墳

祇園大塚山古墳

祇園大塚山古墳は、千葉県木更津市祇園に位置していた前方後円墳です。この古墳は、祇園・長須賀古墳群を構成する古墳の一つであり、かつては小櫃川下流域の沖積地に築かれた大型の古墳でした。しかし、現在は墳丘が失われています。

概要

1891年（明治24年）に地元住民によって発掘調査が行われ、その際に多くの副葬品が出土しました。しかし、残念ながらその後、墳丘は削平されてしまいました。古墳の形状は前方後円墳で、前方部が西北西を向いていました。墳丘の表面からは円筒埴輪が発見されたほか、須恵器（大型𤭯）も伝世しています。また、墳丘の周囲には周溝（盾形と考えられる）が巡らされていました。

埋葬施設は、明治24年の発掘時の記録によると、板石6枚を組み合わせた組合せ式石棺であったと考えられています。副葬品としては、画文帯四仏四獣鏡、金銅製眉庇付冑、銀製長型耳飾、銀製飾り板、金銅製挂甲小札、銀製挂甲小札、鉄鏃、刀剣などが出土しました。特に注目されるのは、金銅製眉庇付冑と金銅製挂甲小札で、これらは金銅薄板で作られた装飾性の高い非実用的な甲冑であり、類例が少ない貴重なものです。

築造時期は古墳時代中期の5世紀中葉から後半頃と推定されています。祇園・長須賀古墳群の中では、高柳銚子塚古墳に続く小櫃川水系の首長墓と位置付けられており、墳丘の規模や副葬品の質から、千葉県内でも有数の古墳であったと考えられています。

墳丘

『千葉県君津郡清川村地図』から推定される墳丘の規模は以下の通りです。

墳丘長：約100メートル
後円部直径：約55メートル
くびれ部幅：約30メートル
前方部幅：約55メートル

出土品

古墳から出土した主な遺物は以下の通りです。

画文帯四仏四獣鏡
金銅製眉庇付冑
銀製長型耳飾
銀製飾り板
金銅製挂甲小札
銀製挂甲小札
鉄鏃
刀剣

これらの出土品のうち、画文帯四仏四獣鏡は宮内庁書陵部で、それ以外のものは東京国立博物館で保管されています。また、東京国立博物館には祇園出土とされる人物埴輪片が所蔵されており、この埴輪片も本古墳の出土品である可能性があります。

関連施設

東京国立博物館（東京都台東区）：祇園大塚山古墳の出土品を保管しています。

参考文献

小沢洋「大塚山古墳 > 祇園大塚山古墳」『日本古墳大辞典』東京堂出版、1989年。ISBN 4490102607。
「祇園大塚山古墳」『日本歴史地名大系 12 千葉県の地名』平凡社、1996年。ISBN 4582490085。
「祇園・長須賀古墳群」『千葉県の歴史 資料編 考古2（県史シリーズ10）』千葉県、2003年。

関連文献

村井嵒雄「千葉県木更津市大塚山古墳出土遺物の研究」『Museum』第83号、東京国立博物館、1966年12月、2-17頁。
白井久美子「祇園大塚山古墳の埴輪と須恵器」『古代』第83号、早稲田大学考古学会、1987年3月、100-109頁。
上野祥史・国立歴史民俗博物館 編『祇園大塚山古墳と5世紀という時代（歴博フォーラム）』六一書房、2013年。

関連項目

祇園・長須賀古墳群

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