祈祷性精神病

祈祷性精神病とは

祈祷性精神病は、日本の精神科医である森田正馬によって命名された、特殊な精神障害の一種です。森田は当初「祈祷性精神症」と名付けていましたが、後に学会で「祈祷性精神病」と改名されました。この病は、迷信、まじない、祈祷、あるいは宗教的な要因が深く関わって発症すると考えられています。

症状の特徴

祈祷性精神病の主な特徴は、自己暗示によって引き起こされる精神的な異常です。具体的には、以下のような症状が現れることがあります。

人格の変化: これまでとは異なる人格が現れる。
宗教的な妄想: 宗教的な内容の妄想を抱く。
憑依妄想: 何かに憑依されているという妄想を抱く。

これらの症状は、宗教への過信や異常な信仰の仕方が原因となっていることが多いとされています。発症までの経過は数日から数ヶ月とされ、特殊な病症として認識されています。

発症しやすい人の特徴

森田正馬の研究によれば、祈祷性精神病は特に以下のような人に多く見られる傾向があります。

年齢: 40歳以上の女性。
教育: 十分な教育を受けていない人。
性格: 自信家で強情な性格。

発症の動機としては、「家族や自分の病気を治したい」「家計が苦しい」「世の人々を救いたい」といった、悪意のない純粋な願いが挙げられます。しかし、それが過度な信仰に繋がり、精神的な異常を引き起こすと考えられます。

歴史的背景と研究

1915年に発表された森田正馬の論文では、祈祷性精神病はヒステリーの一種であるとされています。その後、1943年には精神科医の村上仁が、この病を「心因性要素の顕著な変質性精神病」と定義しました。

この病は、祈祷師から「憑き物だ」と告げられ、祈祷を行うことによって発症するケースが多く見られます。また、治癒後には祈祷に懲りる人もいるという特徴もあります。

実例

実際の症例として、手当て療法中に眉間への手かざしを受けた際に、霊動という神秘体験を経て祈祷性精神病を発症したケースが報告されています。このように、特定の宗教的儀式や体験が発症の引き金となる場合があります。

日本の文化的背景

日本国内では、東北地方の恐山（霊山）のイタコや、沖縄県の慣習など、祈祷や宗教的な儀式が深く根付いている地域があります。これらの地域では、特に祈祷性精神病の発症に注意が必要とされています。

参考文献

『迷信と妄想』 森田正馬 白揚社 1983年 ISBN 4826970765

関連項目

悪霊ばらい
憑依
狐憑き
* シャーマニズム

これらの関連用語も、祈祷性精神病の理解を深める上で参考になります。

祈祷性精神病は、単なる迷信や宗教的な行動だけでなく、精神医学的な側面からも理解する必要がある病気です。発症の原因や症状、治療方法について、さらなる研究と理解が求められています。

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