祖父谷の天然ダム湖

祖父谷の天然ダム湖：黒部峡谷に現れた若い堰き止め湖

富山県黒部市、黒部川水系の祖父谷上流（黒部峡谷）に位置する祖父谷の天然ダム湖は、正式名称を持たない通称です。「祖父谷の自然ダム湖」や「祖父谷の堰き止め湖」といった呼び名も用いられています。この湖沼は、1995年（平成7年）7月11日に発生した大規模な水害によって誕生しました。

形成と特徴

1995年の7.11水害では、標高2,074.7メートルのほぼ中背山南面で約20ヘクタールもの大規模な山体崩壊が発生しました。この際に発生した大量の土砂が黒部川をせき止め、祖父谷の天然ダム湖を形成したのです。湖は中ノ谷と奥不帰谷の合流地点に位置しています。

山体崩壊の原因は、斜面に存在する活断層の破砕帯と、斜面にほぼ平行に走る幅広いクラック（隙間）に関係していると考えられています。これらの地質学的要因が、集中豪雨による浸透水の影響を受け、岩盤が帯状に滑り落ちる大規模な崩壊を引き起こしたと推測されています。

他の多くの自然ダム湖と比べて、祖父谷の天然ダム湖の最大湛水容量は715,250立方メートルと比較的少ないです。このため、一度に決壊する危険性は低いと評価されています。しかし、将来的に大規模な豪雨が発生し、河道を埋めた土砂を大量の水が越えるような状況になれば、決壊の危険性も高まる可能性があります。

1996年10月22日に行われた水質調査では、水温7.3℃、pH 8.59、電気伝導度119.2 μs/cmという結果が得られています。これらの数値は、湖の環境状態を知る上で重要な指標となります。

今後の課題

祖父谷の天然ダム湖は、その発生経緯や規模、そして潜在的な危険性から、継続的な観測と調査が不可欠です。豪雨時の挙動や、土砂の安定性、さらには周辺環境への影響など、様々な側面から詳細な分析を行うことで、安全性の確保と適切な管理につなげていく必要があります。将来的には、正式名称の決定や、より詳細な情報発信も重要となるでしょう。

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