神奈川県立磯子高等学校

神奈川県立磯子高等学校は、かつて神奈川県横浜市磯子区に存在した公立の高等学校です。神奈川県の進める「高校百校新設計画」の一環として、磯子区において最初に設置された普通科高校として、地域の教育を長きにわたり支えました。しかし、時代の変化に伴う県立高校改革により、2020年（令和2年）度をもって神奈川県立氷取沢高等学校と統合され、神奈川県立横浜氷取沢高等学校として新たな歴史を刻むこととなり、磯子高等学校としての歴史は幕を閉じました。閉校後の校舎は使用されず、新しい横浜氷取沢高校は旧氷取沢高校の施設を使用しています。

設置学科と教育

本校に設置されていた学科は普通科のみでした。普通科の中には、標準的な学習を行う一般コースに加え、国際的な視野を広げるためのグローバルコミュニケーションコースが設けられていました。学校生活においては、生徒たちが落ち着いて学習に取り組める環境づくりを重視しており、特色ある教育活動として、全学年で毎日の朝一番に10分間の読書時間を設ける「朝読書」を実施していました。これは週5回、合計50分間を総合学習の時間に充てるもので、生徒たちの読書習慣の定着や集中力向上に寄与しました。卒業生の多くは四年制大学へ進学し、その割合は約35〜40%程度でした。特に地域に根差した関東学院大学や神奈川大学といった中堅規模の大学への進学者が多く見られました。

沿革

磯子高校の設立準備は、1976年（昭和51年）9月1日に「神奈川県立横浜南部方面新設校」として開始されました。翌1977年（昭和52年）1月には正式に設立が告示され、当初は県立港南台高校内で開校に向けた準備が進められました。同年3月30日には、県立富岡高校（現在の神奈川県立金沢総合高等学校）の敷地内に設けられた仮設校舎へ移転。そして4月6日に第1回入学式を挙行し、180名の記念すべき第1期生が入学しました。校舎の建設は段階的に進み、1979年（昭和54年）3月に東棟と北棟が完成して仮校舎からの移転が実現。同年5月には体育館、11月には南棟と西棟が完成しました。全ての施設が整ったことを祝い、1980年（昭和55年）5月10日に盛大な落成記念式典が挙行されました。創立の節目には記念式典が開催され、1987年（昭和62年）に10周年、1997年（平成9年）に20周年、2007年（平成19年）に30周年、そして閉校を控えた2017年（平成29年）に40周年を迎えました。10周年記念事業として生徒用ロッカーや中庭の藤棚が設置されるなど、施設整備も進められました。教育課程も時代に合わせて改編され、1991年（平成3年）4月には国際ビジネスコースが設置されましたが、2013年（平成25年）にはより広範な学びを提供するグローバルコミュニケーションコースへと改編されました。施設面では、1991年7月15日には「サーフ'90」で使用されたログハウスが移築・完成し、同年9月には「ログハウス91」と命名、10月15日には披露式が行われました。また、1992年（平成4年）3月31日にはプールが完成し、体育施設が充実しました。国際交流にも積極的に取り組み、1998年（平成10年）6月30日にはオーストラリアのビクトリア州立キャンバーウェル高校と、2013年（平成25年）9月20日には同じくオーストラリアのクイーンランド州立レーベンズホー高校と姉妹校提携を結びました。2008年（平成20年）には朝読書が開始されるなど、教育内容にも工夫が凝らされました。2014年（平成26年）には、スクールカラーとして「せせらぎブルー」、スクールフラワーとして「ハナミズキ」が定められ、学校のシンボルとなりました。しかし、神奈川県の県立高校改革プランに基づき、2015年（平成27年）12月14日に再編統合の対象校となることが決定。これを受け、2017年（平成29年）4月6日に入学した318名の生徒が、磯子高校としての最後の入学生となりました。

部活動の活躍

磯子高校では、学業だけでなく部活動も非常に盛んであり、多くの部が顕著な実績を残しました。運動部では、陸上競技部が全国高等学校陸上競技対校選手権（インターハイ）への出場経験を持ち、陸上競技部と男子バドミントン部が関東大会に出場しています。特に近年活躍が目覚ましかったのがダンス部で、『春の日本高校ダンス部選手権』東日本大会での入賞や、地元の磯子区の大会で高校生以上の部門での最優秀賞獲得など、その実力を地域内外に示しました。2016年夏の全国大会出場や、2018年春の東日本大会スモールクラスでの準優勝は特筆すべき成果です。文化部では、新聞委員会と書道部が全国高等学校総合文化祭に出場しました。新聞委員会は15年連続出場という驚異的な記録を保持し、県内のコンクールでも数々の賞を受賞する常連校でした。吹奏楽部も地域の多様なイベントに招かれ演奏活動を行い、神奈川県大会で銀賞を受賞するなど、音楽面でもレベルの高い活動を展開しました。野球部も着実に力をつけ、平成29年度神奈川県秋季大会では創部以来初となるベスト8進出を果たすなど、各部が目標に向かってひたむきに努力していました。

交通アクセス

本校への主なアクセス手段はバスでした。最寄り駅からのルートとして、JR根岸線の洋光台駅または磯子駅、京急本線の上大岡駅または金沢文庫駅からバスに乗車し、「上中里町」または「さわの里小学校前」バス停で下車するのが一般的でした。

著名な出身者

磯子高校は、様々な分野で活躍する多くの著名人を輩出しています。

浅野忠信（俳優）
三輪ひとみ（女優）
SHELLY（モデル、タレント）
松本梨香（声優）
中山加奈子（ミュージシャン、プリンセス・プリンセス）
大友麻衣子（元女子サッカー選手）
大場美奈（アイドル、元SKE48）
緑川賢司（実業家）
* 針谷大輔（右翼活動家）

統合

前述の通り、神奈川県立磯子高等学校は2020年（令和2年）4月1日に神奈川県立氷取沢高等学校と統合され、神奈川県立横浜氷取沢高等学校として新たなスタートを切りました。旧磯子高校の校舎は閉鎖され、横浜氷取沢高校の校舎は旧氷取沢高校のものを使用しています。

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