神奈川県道732号湯本元箱根線

神奈川県道732号湯本元箱根線は、足柄下郡箱根町内に位置する一般県道です。箱根湯本の三枚橋交差点（国道1号交点）を起点とし、元箱根の畑宿入口交差点（こちらも国道1号交点）を終点とする、延長10.8キロメートルの路線です。

この県道は、かつての東海道、特に江戸時代に整備された「箱根八里」と呼ばれる区間の一部をなしており、歴史的に非常に重要な道です。現在の国道1号（箱根新道）と並行する形で、山間の地形に沿って敷かれています。

歴史

神奈川県道湯本元箱根線の歴史は、江戸時代初期に遡ります。慶長9年（1604年）、それまで箱根越えに使われていた湯坂道に代わり、須雲川沿いのルート、すなわち現在の県道が通る経路が新たな東海道として開かれました。その後、旅人の安全と利便性の向上のため、延宝8年（1680年）にはこの区間に石畳が整備され、「箱根旧街道」として知られるようになります。

明治時代に入ると、この道は近代的な国道へと指定されます。明治18年（1885年）には明治国道2号の一部となり、大正9年（1920年）には大正国道1号に指定されました。しかし、昭和5年（1930年）の北伊豆地震では、道路が壊滅的な被害を受けました。戦後、モータリゼーションの進展とともに、箱根新道などの新たな幹線道路が整備される中、このルートは昭和35年（1960年）に神奈川県道として指定され直され、現在の神奈川県道732号湯本元箱根線となりました。近年では、令和元年東日本台風により、お玉ヶ池周辺で土砂流出が発生し、一時通行止めとなるなど、自然災害の影響を受けることもあります。

路線状況

本路線は、旧東海道のルートを概ね踏襲しているため、近代的な規格で建設された国道1号と比較すると、道路状況が大きく異なります。全体的に勾配が急で、特にカーブが多く見られます。また、道幅が狭い区間が多く、対向車とのすれ違いには相互に譲り合いが必要となる箇所が少なくありません。

芦ノ湖方面への抜け道としても利用されますが、観光シーズンには旧街道を歩く観光客や自転車の利用者も多くなります。特に見通しの悪いカーブでは、車だけでなく、これらの歩行者や自転車にも十分な注意が必要です。

また、この路線には「七曲り」と呼ばれる連続する急カーブ区間があり、ここは二輪車の通行について特有の規制があります。具体的には、550cc未満の自動二輪車は、4月1日から11月30日までの期間中、土曜日・日曜日・祝日の午前8時から午後3時までの時間帯は通行できません。この規制対象となる車両は、箱根新道など他の迂回路を利用する必要があります。

公共交通としては、箱根登山バスが箱根湯本駅から元箱根方面へ向かう路線を運行しており、1時間に1～2本程度の頻度で利用できます。これらのバス路線では、箱根フリーパスが利用可能です。

地理

神奈川県道732号湯本元箱根線は、その全線が神奈川県足柄下郡箱根町内を通過します。起点の三枚橋交差点で国道1号と、須雲川付近の須雲川インターチェンジで国道1号箱根新道と、終点の畑宿入口交差点で再び国道1号と接続しています。

路線の沿線には、箱根湯本温泉をはじめ、かつて宿場町として栄えた畑宿があります。また、江戸時代の雰囲気を今に伝える箱根旧街道や、その歴史を学べる箱根旧街道資料館、休憩所として親しまれる甘酒茶屋なども近くに位置しています。地理的には、二子山（下二子山）の山麓を通り、お玉ヶ池のような自然景観も見られます。

道路施設としては、早川に架かる三枚橋や、須雲川に架かる須雲川橋などが路線の重要な一部を構成しています。

その他

この路線、特に「七曲り」区間は、漫画・アニメ作品「頭文字D Fifth Stage」において、公道レースチーム「スパイラル」のホームコースとして登場するなど、サブカルチャーにおいてもその名が知られています。

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