神学大全

神学大全

『神学大全』は、トマス・アクィナスが著した中世ヨーロッパの神学書で、神学の集大成を目指して体系的に理解を深めるために書かれました。この著作は、キリスト教信仰の根本を理性的に説明し、あらゆる神学的テーマを網羅するという意欲的な محاولةです。この辞書では、その成立背景や構成、叙述形式、引用される学者について詳しく説明します。

成立の背景

『神学大全』は、トマスの多くの著作の中で最も知名度が高く、序文には神学初心者向けの教科書としての目的が示されています。著作は理性と啓示を見事に融合させ、信者が宗教的テーマに対しても理性的な理解を持てるように構成されています。これは、神学が持つ複雑な概念を明瞭に紹介し、信者にとって道しるべとなることを意図していました。トマスは1265年頃からこの作品の執筆を始め、1273年12月6日には突如として宗教的な体験を受け、そのため著述活動が途絶えます。彼が1274年に亡くなると、弟子たちが未完成の部分を引き継ぎました。

構成

『神学大全』は、全体が三つの部分に分かれています。

1. 第一部: 神について - 119問
- 神とその性質、三位一体、創造の教義とそれに基づく善悪の概念が扱われます。
2. 第二部: 人間について - 303問
- 人間の目的、感情、美徳と罪、及び法と恩寵に関するテーマが論じられ、人間の行動が神に向かう過程を考察します。
3. 第三部: キリストについて - 90問
- 受肉や秘跡に関する問題を含み、キリストが人間にとっての救済の指針であることが強調されます。

この三部方式は、ネオプラトニズムの影響を受けつつも、キリスト教的な救済史的視点を踏まえた形で神と人間、そしてキリストとしての神の関係性を明らかにしています。

叙述形式

『神学大全』の構成は、主に問題提起とその解答の展開を通じて進行します。まず、問題が掲示され、次に異論が示されます。この異論は、聖書や過去の学者からの引用によって支持されます。その後、対論が登場し、異論に対する反対意見が展開されます。最後に、トマスはこれらの考えを統合した解答を提示します。

このプロセスは非常に特徴的であり、単に異論を排除するのではなく、全体を包括的に理解するための視点を提供しています。トマスは、理性を重んじつつも信仰の重要性を認識し、それを両立させる明快さを持っています。

引用される学者たち

『神学大全』では、多くの当時の重要な思想家たちが引用されています。特に、アリストテレスは「哲学者」として象徴され、彼の手法が神学再構築に用いられました。また、「教師」として知られるペトルス・ロンバルドゥスは、教皇たちの著作を注解し、当時の大学で用いられる教材となりました。アウグスティヌスや偽ディオニシウス、マイモニデス、アヴェロエスといった他の重要な思想家も頻繁に引用され、それぞれの影響が色濃く表れています。

日本語訳

『神学大全』の日本語訳は複数存在し、1950年代から2010年代にかけての邦訳や最新の電子書籍形式での提供など、広くアクセス可能になっています。これにより、より多くの人々がトマス・アクィナスの思想に触れる機会を得ています。

結論

『神学大全』は、神学の根本的な問題を体系的に扱い、理性と信仰の架け橋となる重要な著作です。その複雑さがありながらも、読者にとって信仰への理解を深める手助けとなることでしょう。トマス・アクィナスの教えは、現代においてもなお影響を与え続けています。

もう一度検索