ペトルス・ロンバルドゥス

ペトルス・ロンバルドゥス（Petrus Lombardus, 1100年頃 - 1160年7月20日）は、中世ヨーロッパにおけるカトリック教会の司教であり、スコラ神学の重要な人物です。彼は「Magister Sententiarum」（命題集の師）として知られ、その著作『命題集』は中世神学において非常に大きな影響力を持っていました。イタリア語名ではピエトロ・ロンバルド（Pietro Lombardo）とも呼ばれます。

生涯と業績

ペトルス・ロンバルドゥスは、12世紀の初めにイタリアで生まれ、後にパリで活動しました。彼は神学の研究に専念し、特に教父たちの著作を深く研究しました。その研究成果としてまとめられたのが、彼の代表作である『命題集』です。

『命題集』は、教父たちの著作から重要な命題を収集し、それらを組織的に解説したものです。この著作は、当時の神学教育において教科書として広く用いられ、後世の神学者たちにも多大な影響を与えました。特にトマス・アクィナスは、彼を「教師」と呼び、その神学に深く依拠しました。

また、ペトルス・ロンバルドゥスは、サクラメント（秘蹟）の定義においても重要な役割を果たしました。彼は、サン・ヴィクトルのフーゴーによるサクラメントの定義から物質性を削除することで、悔悛をサクラメントとして取り入れることを可能にしました。この結果、カトリック教会における7つの秘蹟が確定することになったのです。

『命題集』とその影響

『命題集』は、中世の神学教育において非常に重要な役割を果たしました。この著作は、教父たちの著作から重要な命題を収集し、それらを組織的に解説したものであり、神学の基礎を学ぶための教科書として広く用いられました。また、この著作は後世の神学者たちにも大きな影響を与え、トマス・アクィナスの『神学大全』やオッカムのウィリアムによる批判的な分析など、多くの著作や議論の出発点となりました。

その他の側面

ペトルス・ロンバルドゥスは、ダンテの『神曲』にも登場する人物です。これは、彼が中世社会においてどれほど重要な人物であったかを示す証拠の一つと言えるでしょう。

結論

ペトルス・ロンバルドゥスは、中世神学において非常に重要な役割を果たした人物です。彼の著作である『命題集』は、当時の神学教育において教科書として広く用いられ、後世の神学者たちにも多大な影響を与えました。また、サクラメントの定義における彼の貢献は、カトリック教会の教義を確立する上で不可欠なものでした。彼の業績は、中世の神学、そしてカトリック教会の歴史を理解する上で欠かせないものと言えるでしょう。


参考文献

『キリスト教神学入門』A・E・マクグラス著、神代真砂実訳、教文館
『存在の一義性―定本・ペトルス・ロンバルドゥス命題註解』、ヨハネス ドゥンス・スコトゥス著、哲学書房
Marcia L. Colish, Peter Lombard, 2 vols. (Leiden: Brill, 1994). ISBN 9004098615
Philipp W. Rosemann, Peter Lombard (Oxford: Oxford University Press, 2004). ISBN 0195155440, ISBN 0195155459 (pbk.)

外部リンク

Ludwig Hödl, in Biografish-Bibliografisches Kirchenlexikon: Petrus Lombardus
"Peter Lombard Magister Sententiarum" 命題集（英語）
* Peter Lombard's Book of Sentences ラテン語

もう一度検索