神戸製鋼硬式野球部

神戸製鋼硬式野球部は、兵庫県加古川市を活動拠点とし、かつて日本野球連盟に加盟していた社会人野球の強豪チームでした。1951年に産声を上げ、数々の大会で実績を残しましたが、2002年に活動を休止し、2013年にチームの歴史に幕を下ろしました。

創部から発展へ

チームは1951年、神戸製鋼所神戸製鉄所の硬式野球部として発足しました。創成期は、選手の数が十分ではなく、軟式野球部からの転向者やチーム運営を担うマネージャーまでもが選手登録を行うなど、手探りの状態からのスタートでした。

練習環境も決して恵まれているとは言えませんでした。発足間もない1954年には、初めて都市対抗野球への出場を果たしましたが、その直後、練習場としていた三角グラウンドが神鋼病院建設のために撤去されるという事態に見舞われます。その後しばらくは専用の練習場所がない困難な時期が続きましたが、製鉄所建設時に土砂を採取した跡地を活用し、1963年に神戸市灘区に丸山グラウンドが整備され、練習環境は大きく改善されました。

1970年代に入ると、企業イメージ向上策の一環として、バレーボールチームや陸上チームとともに「専門団」へと位置づけが変更されます。これにより、チームに対する資金援助や練習時間の確保など、会社からの全面的な支援が手厚くなり、チーム力強化の大きな追い風となりました。

栄光と試練

手厚い支援体制のもと、チームは着実に力をつけ、1977年には社会人野球の最高峰である都市対抗野球大会で念願の初優勝を飾ります。これはチーム史における最大の栄光と言えるでしょう。

しかし、この優勝以降、都市対抗本大会には出場を続けるものの、1992年にベスト8に進出するまで、初戦敗退を繰り返す低迷期が続きました。この時期は、「関西では強さを発揮するが、関東で開催される都市対抗では力を出し切れない」といった評価を受けることもありました。

拠点移転と再浮上

チームの再建と職場活性化を目指し、1987年には本拠地を神戸市から加古川市の加古川製鉄所へ移転しました。この移転に合わせて、工業団地内に両翼97m、センター120mという広さを持つ専用の加古川球場が新たに建設されます。1990年にはクラブハウスも設けられ、指導スタッフも増員されるなど、施設面、体制面での充実が図られました。

1995年には専門団体制から再び硬式野球部へと名称が変更されましたが、チーム力は着実に向上していました。社会人野球日本選手権では、1999年にチーム史上最高のベスト4進出を果たし、翌2000年もベスト8入りを果たすなど、全国の舞台で再びその存在感を示しました。

活動休止、そして解散へ

しかし、チームの将来に大きな変化が訪れます。2001年9月、翌シーズン限りでの活動休止が決定されました。最後のシーズンとなった2002年も、チームは日本選手権に4年連続となる出場を果たし、これが最後の公式戦出場となりました。2002年のシーズン終了をもって、チームは活動を休止。

そして、活動休止から11年後の2013年4月16日をもって、神戸製鋼硬式野球部は正式に解散し、約60年にわたる歴史に静かに幕を下ろしました。

主な実績とプロ野球選手

神戸製鋼硬式野球部は、都市対抗野球大会に13回出場し、優勝1回（1977年）の輝かしい記録を残しました。また、社会人野球日本選手権大会には18回出場しています。この他、JABA高砂市長杯争奪大会で5回、JABA岡山大会で3回、JABA九州大会で1回優勝するなど、地方大会でも多くのタイトルを獲得しました。

また、チームからは多くの優れた選手がプロ野球界へと羽ばたきました。井口龍三選手、小林晋哉選手、登記欣也選手、岡本哲司選手、矢野和哉選手、江坂政明選手、三輪隆選手、米正秀選手、和田一浩選手、前田大輔選手らが、神戸製鋼で力を磨き、プロの舞台で活躍しました。

神戸製鋼硬式野球部は、その長い歴史の中で、都市対抗優勝という栄光や、多くのプロ野球選手を輩出するなど、社会人野球界に確かな足跡を残しました。活動は終了しましたが、その歴史は多くの野球ファンの記憶に残されています。

もう一度検索