神田久太郎

神田久太郎：昭和初期を代表する柔道家

神田久太郎（かんだ きゅうたろう）は、1897年12月20日生まれ、1977年6月15日に没した日本の柔道家です。講道館九段という段位からもわかるように、その実力は折り紙付きで、戦前の柔道界を牽引した一人として知られています。

経歴

福島県出身の神田は、幼少の頃から武道を嗜み、渡辺峰松や大日本武徳会福島支部で柔術の基礎を築きました。その後、日本大学中学校に進学するも中退。千葉の武徳殿で戸塚派揚心流の山本欽作に師事し、武徳会で初段を取得しました。しかし、山本が講道館柔道を嫌っていたため、神田は密かに講道館二段の皆川民が営む練心館道場にも通い、得意技となる肩車の基礎を築きました。

兵役を終えた後、1923年に講道館に入門。20代半ばという遅いスタートでしたが、柔術で培った地力と才能を発揮し、すぐに頭角を現しました。入門からわずか3年弱で四段に昇段。三船派に属し、肩車や踵返、双手刈といった特異な技を磨きました。

1925年には明治神宮大会で優勝。その後、千葉刑務所や警視庁などで柔道師範を務め、1933年からは関東庁の主任柔道教師として旅順市に渡りました。

全日本選士権大会での活躍

神田は数々の大会に出場し、その名を轟かせました。1930年の第1回全日本選士権大会では、決勝で須藤金作に敗れたものの準優勝。雨の中で行われた須藤との決勝戦は、互いの得意技がぶつかり合う名勝負として、柔道史に刻まれています。翌年の第2回大会では、決勝で高橋定吉を破り、見事優勝を果たしました。

1934年の皇太子殿下御誕生奉祝天覧武道大会にも出場し、決勝トーナメントに進出。決勝では大谷晃に敗れたものの、準優勝という成績を収めました。

1936年の第6回全日本選士権大会では、決勝で再び須藤金作と対戦。朽木倒で勝利し、雪辱を果たすとともに、自身2度目の選士権制覇を成し遂げました。

指導者としての貢献

戦後は福島県警察の柔道師範を務め、後進の育成に尽力しました。1948年には、第1回全日本選手権大会に出場。50歳を超えての出場は、当時としては異例であり、選手宣誓も務めました。1964年の東京五輪では、技術強化副委員長として選手強化に貢献。決勝戦では審判員も務めました。その後も、全日本柔道連盟理事や福島県柔道連盟会長などを歴任し、柔道の普及・発展に尽力しました。

1958年には九段に昇段。晩年は肺がんで療養生活を送りましたが、1977年6月15日に79歳で亡くなりました。

得意技

神田は、寝技を得意としたほか、肩車や双手刈といった独特な技を駆使しました。特に、肩車は嘉納治五郎や三船久蔵から指導を受け、自身の研究・工夫を重ねて得意技にしました。双手刈は、柔術時代の経験から編み出した技で、嘉納治五郎の承認を得て、講道館の技として採用されました。

人柄

神田は、人情味豊かで、人懐っこい性格だったと言われています。晩年まで研究熱心で、技の研究には余念がありませんでした。その功績を称え、勲四等瑞宝章や福島県文化功労賞が贈られました。

神田久太郎は、その卓越した技術と情熱で、昭和初期の柔道界を彩った偉大な柔道家です。

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