神田祭

神田祭とは

神田祭は、東京都千代田区にある神田明神の祭礼で、「神田明神祭」とも呼ばれます。山王祭、深川八幡祭と並び、江戸三大祭の一つとして広く知られています。また、京都の祇園祭、大阪の天神祭と共に、日本三大祭りの一つにも数えられます。現在は5月中旬に開催されますが、以前は旧暦の9月15日に行われていました。

概要

神田祭は、隔年（西暦奇数年）の5月中旬に開催される神田明神の祭礼です。江戸時代から全国的に有名で、「日本の三大祭り」「江戸三大祭」の一つとして数えられています。

祭りの主な行事としては、祭神を御輿に移す鳳輦神輿遷座祭、各町内会の連合渡御となる氏子町会神輿神霊入れ、伝統の神事能である明神能・幽玄の花、そしてすべての神職が奉仕する例大祭などがあります。

歴史

神田祭の起源に関する記録はほとんど残っておらず、詳しいことは不明ですが、江戸時代以降に大祭として発展しました。

江戸時代の『神田大明神御由緒書』によると、徳川家康が関ヶ原の戦いの際、神田大明神に戦勝祈願をしました。家康の命で毎日祈祷が行われ、9月15日の祭礼の日に家康が勝利し天下統一を果たしました。これにより、家康は神田大明神を深く崇敬し、社殿、神輿、祭器を寄進し、神田祭は徳川家縁起の祭として盛大に執り行われるようになったと伝えられています。

江戸三大祭の一つとして、「神輿深川、山車神田、だだっ広いが山王様」と謳われたように、神田祭も元々は山車が出る祭りでした。しかし、明治以降の路面電車の開業や電信柱の設置により、山車の通行が困難になり、次第に曳行されなくなりました。関東大震災や戦災によって山車は全て焼失しましたが、山車に飾られていた人形や、明治期に売却されたという山車が関東各地に現存しています。現在は山車の代わりに町神輿が祭りの中心となっています。

現行の行事内容

大祭は隔年（西暦奇数年）に行われ、様々な行事が催されます。

神幸祭

5月15日に近い土曜日に行われる神社の行事です。午前8時に神社を出発し、一の宮・大己貴命、二の宮・少名彦命、三の宮・平将門の鳳輦や宮神輿が平安装束をまとった人々に付き添われて進みます。巫女と乙女役の若い女性たちが花を添えます。午後1時頃に両国旧御仮屋で休憩し神事を行い、午後4時頃に三越本店に到着すると、御輿、山車、武者行列などの付け祭りが加わり、午後7時頃に神社に戻ります。

御輿宮入

神幸祭の翌日に行われる各町内の行事です。各町内が町神輿による御輿連合を組織し、地区を巡行するほか、時間を決めて神社に練り込みます。御輿の担ぎ手の中にはふんどし姿の人も多く、地区によっては妖艶な手古舞も披露されます。

太鼓フェスティバル

神幸祭と御輿宮入の当日、神社の隣の宮本公園の特設ステージで開催されます。午前9時から午後7時頃まで、関東をはじめとした各地の和太鼓集団が多数出演します。稚児舞（少女の巫女による浦安の舞）も行われます。

例大祭

毎年5月15日に固定で行われる厳粛な行事です。神社の巫女が正装で浦安の舞を奉納します。ただし、5月15日が日曜日の場合は御輿宮入を優先し、例大祭の日程は変更されます。

江戸時代の神田祭の山車行列

以下は、江戸時代の神幸祭の行列に付き添った山車の一覧で、文久元年（1861年）の記録に基づきます。当時は山車の他に、様々な出し物が「付祭」として祭りを盛り上げていました。

山車の町名と現在の町名（一部）:
一番：諌鼓鶏の吹貫の山車 - 大伝馬町（日本橋大伝馬町）
二番：幣猿の吹貫の山車 - 南伝馬町（京橋）
三番：翁の能人形の山車 - 旅籠町一丁目（外神田）
四番：和布刈龍神の山車 - 旅籠町二丁目（外神田）
五番：蓬莱に亀の山車 - 鍋町（鍛冶町）
六番：花籠に牡丹の山車 - 通新石町（神田須田町）
七番：岩組に牡丹の山車 - 須田町一丁目（神田須田町）
八番：関羽の山車 - 須田町二丁目（神田須田町）
九番：岩組に牡丹の山車 - 連雀町（神田須田町）
十番：月に薄の山車 - 三河町一丁目（内神田）
十一番：武蔵野の山車・坂田金時の山車 - 豊島町（東神田）・湯島町（外神田）・金沢町（外神田）
十二番：岩組に牡丹の山車 - 岩井町（岩本町）
十三番：二見が浦日の出の山車 - 橋本町一丁目（東神田）
十四番：乙姫の山車 - 橋本町二丁目（東神田）
十五番：龍宮門の山車 - 佐久間町一〜二丁目（神田佐久間町）
十六番：岩組に牡丹の山車 - 佐久間町三〜四丁目（神田佐久間町）・富松町（東神田）
十七番：蓬莱の山車 - 久右衛門町一〜二丁目（東神田、岩本町）
十八番：石台に稲穂の山車 - 多町一丁目（神田多町）
十九番：鐘馗の山車 - 多町二丁目（神田多町）
二十番：龍神の山車 - 永富町（内神田）
二十一番：棟上人形の山車 - 堅大工町（内神田）
二十二番：松に杯の山車 - 蝋燭町（内神田、神田司町）・関口町（神田司町）
二十三番：大黒人形の山車 - 神田明神西町（外神田）
二十四番：武蔵野の山車 - 新銀町（神田司町、内神田）
二十五番：戸隠明神の山車 - 新石町（内神田）
二十六番：弁天の山車 - 新革屋町（内神田、鍛冶町）
二十七番：小鍛冶の山車 - 神田鍛冶町（神田鍛冶町）
二十八番：岩に牡丹の山車 - 元乗物町（鍛冶町、神田北乗物町）
二十九番：武蔵野の山車 - 横大工町（内神田、神田多町）
三十番：白雉子の山車 - 雉子町（神田司町）
三十一番：武内宿禰の山車 - 三河町四丁目（神田司町）
三十二番：武蔵野の山車 - 明神下御台所（外神田）
三十三番：汐汲の山車 - 皆川町二〜三丁目（内神田）
三十四番：猩々の能人形の山車 - 神田塗師町（鍛冶町）
三十五番：恵比寿の山車 - 白壁町（鍛冶町）
三十六番：源頼義の山車 - 松田町（鍛冶町）

上記の行列順では、十番と十一番の間に神輿の行列が入ります。当時の祭礼行列は、大榊が先頭、次に氏子町の山車、最後に神輿という構成が一般的でした。しかし、天明3年（1783年）に神田明神の神主の要請により、神輿の行列を山車の後ろに配置するようになりました。これは、神輿の帰社が深夜になるのを避けるためでした。

近年におけるコラボレーション

近年では、以下のようなアニメ作品とのコラボレーションも実施されています。
ラブライブ! (2015年)
ご注文はうさぎですか?? (2017年、2019年)
ソードアート・オンライン (2017年劇場版、2019年アリシゼーション)
バンドリ！ガールズバンドパーティー！ (2019年)
僕のヒーローアカデミア (2019年)
ホロライブプロダクション (2023年)

神田祭は、江戸時代から続く歴史と文化を今に伝える、華やかで活気あふれる祭りです。

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