禁煙タクシー

禁煙タクシーとは

禁煙タクシーは、車内での乗客および運転手の喫煙が禁止されているタクシーです。1980年代後半から導入が始まり、受動喫煙防止の観点からその重要性が増しています。

禁煙タクシーの歴史

1987年以前は、タクシー内での喫煙は規制されておらず、非喫煙者も受動喫煙やタバコの臭いに悩まされていました。1988年に東京で初の禁煙タクシーが登場し、当初は医師の診断書や大きな禁煙表示灯が義務付けられていました。
その後、表示灯は小型化され、地域の90%以上が禁煙車の場合、ステッカーのみで表示が済むようになりました。また、以前は許可が必要だった禁煙タクシー化も、経営者の判断で可能になりました。さらに、禁煙タクシー内で喫煙した乗客に対しては、乗車拒否も認められるようになりました。

全面禁煙と全車禁煙

「全面禁煙」は、特定のタクシー協会に加盟している法人のタクシーが禁煙であることを指します。一方、「全車禁煙」は、地域内のすべてのタクシーが禁煙であることを意味します。2007年に大分県で初めて全車禁煙が導入され、2011年7月には北海道が全地区で全車禁煙となり、日本全国で実施されるようになりました。

タクシー運転手の喫煙率は成人男性の平均よりも高い傾向があり、以前は車内のタバコ臭に関する苦情が多く寄せられていました。全車禁煙の導入により、車内の空気環境は改善されましたが、一部からは喫煙者への配慮を求める声も上がっています。

神奈川県では、2007年に全車禁煙が実施され、2010年には全国初の罰則付き完全禁煙条例が施行されました。2020年には改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例が施行され、喫煙に関する規制はさらに強化されています。

法令上の根拠

健康増進法では、多数の人が利用する施設での受動喫煙防止が努力義務とされていますが、タクシーもその対象に含まれます。運輸省や国土交通省の通達では、禁煙車両の管理や運転手の禁煙が求められています。

旅客自動車運送事業運輸規則では、乗客が乗車中の運転手の喫煙は禁止されていますが、2010年まではタクシーの禁煙化は義務ではありませんでした。しかし、神奈川県では2010年にタクシーを禁煙施設とする条例が施行され、違反者には過料が科せられるようになりました。

各地域のタクシー協会や協議会では、地域の状況に応じて禁煙タクシーを自主的に導入してきました。行政も指導や協力を依頼する立場でしたが、罰則は伴いませんでした。

自主規制による苦情処理

禁煙タクシーに関する苦情には、運転手の車内喫煙や路上喫煙があります。これらの苦情は、地域運輸局やタクシー協会、タクシー会社で対応されます。

タクシー会社は、苦情を申し出た者に対して弁明する義務があり、改善措置と記録の保存が求められます。駅前などのタクシー乗り場やタクシーパークでの路上喫煙は、条例で禁止されている場合や、禁煙車両の管理義務に反するとして苦情の対象となります。

まとめ

禁煙タクシーは、受動喫煙防止のために導入されました。当初は規制が厳しかったものの、徐々に緩和され、現在では多くの地域で全車禁煙が実現しています。法令による規制とともに、自主的な取り組みも重要であり、タクシー業界全体の意識改革が求められています。

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