福士氏

福士氏の歴史と概要

福士氏は、鎌倉時代から戦国時代にかけて、南部氏に仕えた有力な氏族です。南部氏の譜代の家臣として、三上氏、安芸氏、桜庭氏と共に「南部四天王」と称されることもありました。福士氏には、主に「不来方福士氏」と「折笠福士氏」の二つの系統が存在します。

不来方福士氏

不来方福士氏は、新羅三郎義光の次男・実光を遠祖とします。実光の弟である義清が甲斐国を拠点とし、その領地であった甲斐国巨摩郡福士郷（現在の山梨県南巨摩郡南部町福士）を、実光から五代目の義近が与えられ、福士を名乗るようになりました。建久2年（1191年）頃、義近は同族の南部光行の奥州赴任に随行し、奥州へ移住しました。

折笠福士氏

一方、折笠福士氏は、同族である武田氏流板垣氏の祖・板垣兼信の三男・義之を祖とします。義之から九代目の保定（折笠庄次郎）に至ります。

室町時代と不来方城

室町時代になると、福士氏は南部氏の命により不来方城（慶善館・淡路館）を築きました。明徳2年（1391年）8月には、十代目の政長（慶善入道）が将軍足利義満から不来方を賜り、初代不来方城主となりました。政長は隠居後に慶善と改名し、これが現在の盛岡城跡にある慶善舘の由来となっています。また、東顕寺は福士氏が開基した寺院であると伝えられています。南部氏は、福士氏を目代として不来方の支配を強化しました。

九戸政実の乱とその後

福士氏は九戸氏と親戚関係にありましたが、九戸政実の乱後、不来方城主の地位を失いました。その後、不来方城は改築され、盛岡城として生まれ変わります。福士氏は、その後八戸藩士となり、八戸の大慈寺の建設に携わりました。さらに、政定の代には折笠氏に改称したとされています。

福士氏の出自に関する異説

福士氏の出自については、諸説が存在します。

『津軽郡中名字』では、富士氏の支流であるとされています。
『奥南盛風記』では、「本姓不知」と記され、系統不明であるとされています。
* 奥州安倍氏流の豊間根氏（陸奥国閉伊郡豊間根村発祥）一族とする説もあります。

これらの異説は、福士氏の出自が複雑であることを示唆しています。

板垣退助との縁

板垣退助の孫である守正は、先祖の縁から旧八戸藩士族・福士進の娘である桃子と結婚し、久仁子と正明をもうけました。一家は満洲から復員後、神奈川県に住みましたが、守正の死後、長らく岩手県や青森県八戸市に居住しました。岩手県に保管されていた板垣家の遺品は、散逸の恐れがあったため、東京の親族を通じて現在は高知市立自由民権記念館に寄託されています。

まとめ

福士氏は、鎌倉時代から戦国時代にかけて南部氏に仕えた有力な氏族であり、不来方城の歴史とも深く関わっています。その出自には諸説ありますが、南部氏の歴史を語る上で欠かせない一族であると言えるでしょう。

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