福山志料

福山志料について

福山志料（ふくやましりょう）は、江戸時代の後期に備後福山藩のために編纂された地誌です。この地誌は藩主である阿部正精の命を受け、菅茶山や鈴木宜山といった多くの地元の知識人によって成立しました。1793年から1809年にかけての数年間をかけて編纂されたこの資料は、地域の名勝や古跡、寺社仏閣、さらには偉人や文化人の伝記といった内容を幅広く取り上げています。

概要と成立経緯

福山志料は1809年（文化6年）に完成し、これを記念した『上福山志料啓』が藩主に奉呈されました。編纂時には、吉田豊功をはじめ、中山光昭や枝與市房といったメンバーが関与し、実際には菅茶山の貢献が大きかったとされています。「国郡名号」「名官」「名勝」など、多岐にわたるテーマを扱った全35巻から成り立っています。

書籍の内容

この地誌は、村落の地理や歴史的な背景を詳述した「邑里」や、著名な人物伝を紹介する「人物」など、さまざまな構成から成り立っています。具体的には、村の位置、特徴、由来、田畝、石高、住民の数、さらには古跡や寺院の情報などが記されています。また、地元の偉人だけでなく、一般の人々の中からも孝義や節婦に選ばれた人物が取り上げられる点が特徴です。

編纂にあたっては以前から存在した『備陽六郡志』や『西備名区』といった資料が参考にされ、特に後者の寄与が際立っています。実際、『西備名区』からの直接の引用も見られることから、その関係は密接です。

評価

福山志料の編纂は、単なる地誌を超えた重要な文化遺産とされ、資料の豊富さと信頼性が高く評価されています。郷土史家の村上正名は、この地誌が藩主の権威を背景に持つため、貴重な資料が保存されていることを指摘しました。また、この時期の日本社会における学問の普及と、古き良きものを大切にする傾向も反映されています。

活字化の歴史

明治以降、福山志料は東京の阿部伯爵家にて保管されていました。郷土史家である得能正通が、伯爵家の助けを借りて原本を借用し、1910年（明治43年）に自費で印刷し出版を果たしました。この過程は、文化的な遺産を保存し、次世代に伝える努力の一端を示すものです。

結論

福山志料は、備後福山藩の歴史や文化を知る上で欠かせない資料であり、地域社会の多様な側面を記録した重要な地誌です。江戸時代の背景や知識人たちの努力を通じて成り立ったこの文献は、今もなお私たちの地域理解を深める手助けとなっています。

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