福島大火

福島大火（ふくしまたいか）

福島大火とは、かつての福島城下町および近現代の福島市街地において繰り返し発生した大規模な火災を指す総称です。
歴史的には幾度も大火に見舞われていますが、特に近現代で最も大きな被害をも出した1881年4月25日の火災は「甚兵衛火事」とも呼ばれ、単に福島大火と言った場合にこの火災を指すことが一般的です。本稿では、福島の歴史において特筆すべき代表的な大火を取り上げ、その状況と影響を詳述します。

江戸時代最大規模の「半三郎火事」

江戸時代における福島城下最大の火災は、1706年3月18日（宝永3年2月4日）未明に信夫郡福島村（現在の福島市）で発生しました。この火災は「半三郎火事」として知られています。

出火元は、福島城下の北西端に位置する本町の塩屋半三郎宅と記録されています。発生当時は非常に強い西風が吹いており、その強風にあおられた炎は瞬く間に延焼しました。

被害は甚大で、福島城下にあった七つの町のうち、上町（現在の中心市街地である大町や上町にあたる区域）と馬喰町（現在の豊田町付近）を除く五つの町が焼け野原となりました。さらに、福島城の郭内にも火が及び、城域の実に四分の三が焼失するという壊滅的な被害を受けました。詳細な被害としては、長屋だけで292軒が焼失したとされます。城郭内で焼け残ったのは、大手門周辺と北二の丸の一部のみでした。一方で、建築からわずか一年しか経っていなかった新築の櫓は、奇跡的に火災を免れたと伝えられています。

この大火の後、当時の福島藩主であった板倉重寛は、城郭内の再建はもとより、焼失した城下町の区画整理や復興に精力的に取り組みました。この復興事業は、その後の福島城下町の発展に大きな影響を与えました。

近代最大規模の「甚兵衛火事」

近現代の福島市街地において、最も被害が大きかった火災が「甚兵衛火事」と呼ばれる1881年4月25日の大火です。午後4時10分頃に発生しました。

出火場所は、当時の福島県福島町（現在の福島市）の市街地入口にあたる南端部に位置していた福島町1丁目（現在の福島柳町付近）の銭湯「みどり湯」でした。この銭湯の二階堂甚兵衛方より火の手が上がったことから、「甚兵衛火事」の名がつきました。火災の詳しい原因は、タバコの火の不始末によるものとされています。

発生当日は、南から非常に強い風が吹いていました。そのため、市街地の南端から発生した炎は、強い南風に煽られて市街地の中心部に向かって猛烈な勢いで北上しました。火の勢いは福島町10丁目（現在の福島上町付近）にまで及び、広範囲に甚大な被害をもたらしました。この火災による犠牲者は7名にのぼり、焼失した家屋は1785戸という記録的な数に達しました。

被害範囲は広大でしたが、幸いにも福島県庁舎や福島町役場といった行政の中枢を担う建物への直接的な被災は免れました。しかし、多くの市民が家を失い、町の機能は一時的に麻痺状態に陥りました。

この大火の後、当時の福島町長であった鐸木三郎兵衛は、私財をも投じて町の復興に尽力しました。焼け跡からの復旧は困難を極めましたが、これを機に近代的都市基盤の整備が進められ、福島の近代化が促進されるきっかけの一つとなりました。土地区画整理事業なども、こうした大規模災害からの復興過程で検討・実施されることがあります。

歴史を振り返ると、1722年にも福島は大火に見舞われており、近江商人であった西谷善太郎なども被災したことが伝えられています。これらの度重なる大火の経験は、その後の福島の都市計画や防災意識に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

これらの大火は、当時の人々の生活や町の景観を一変させるほどの破壊力を持つ災害でした。しかし、その都度、人々は力を合わせて復興を成し遂げ、福島は新たな歴史を刻んできました。福島大火の歴史は、災害からの立ち直りと、それを通じた町の発展の歩みを今に伝えています。

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