福島城

福島城

福島城は、現在の福島県福島市（かつての陸奥国信夫郡）にあった日本の城郭です。江戸時代には福島藩の政庁として機能し、特に後期からは板倉氏が藩主としてこの地を治めました。城跡の主要部は現在の福島県庁およびその周辺地域に位置しています。

この城は平城でありながら、東側と南側を流れる阿武隈川や荒川が自然の外堀の役割を果たし、堅固な守りを誇りました。築城時期は明確ではありませんが、この一帯には古墳時代には既に地域の中枢となる規模の建造物が存在していたことが、近年の発掘調査によって明らかになっています。

現在の地名では、杉妻町全体や舟場町の大部分に加え、荒町、中町、大町、上町の一部がかつての城域に該当します。

歴史的変遷

城の歴史は古く、文献で確認できる最初の記録は1413年（応永20年）に伊達松犬丸（後の伊達持宗）が立て籠もったとされる大仏城に遡ると言われています。この大仏城は後に杉妻城または杉目城と改称され、伊達氏の支配下にありました。特に、天文の乱後は伊達晴宗が隠居城として使用するなど、伊達氏にとって重要な拠点の一つでした。

伊達氏が去った後、1591年（天正19年）の奥州仕置によってこの地は蒲生氏郷の領地となります。この頃、杉妻城に入ったのが木村吉清です。木村氏は1592年（文禄元年）頃、居城を大森城から杉妻城に移し、城の名を福島城と改めました。これにより、福島城は信夫郡の中心的な城郭としての地位を確立しました。

1598年（慶長3年）に蒲生氏が移封されると、信夫郡は上杉景勝の領地となり、福島城には城代が置かれました。伊達氏との緊張が高まる中、本庄繁長のような重臣が城代を務めるなど、軍事的な重要性も増しました。1600年（慶長5年）の松川の戦いでは、城の北辺一帯が戦場となりました。上杉氏の減封後も本庄氏が城代を続けましたが、後に信夫郡代官は再び大森城を拠点としました。この上杉氏時代には、福島盆地の農業振興のため、西根堰（にしねぜき）という大規模な水路が整備され、耕地面積が飛躍的に拡大しました。

1664年（寛文4年）に信夫郡が天領となると、その後1679年（延宝7年）には本多忠国が福島藩主として福島城に入城しました。短期間の天領や堀田氏時代を経て、1702年（元禄15年）に板倉重寛が入城し、以後、明治維新までの約170年間、板倉氏が藩主として福島城を居城としました。

幕末の戊辰戦争では、福島藩は奥羽越列藩同盟に加わって新政府軍と対立しました。1868年（慶応4年）の二本松城落城後、藩主板倉勝己は降伏し、福島城は新政府軍に引き渡されました。翌1869年（明治2年）に板倉氏は他領へ移され、福島藩は廃止されました。

城郭の構造

江戸時代の福島城の構造は、板倉氏時代の絵図などからある程度知ることができます。城は大きく内堀と外堀に囲まれた郭（くるわ）で構成されていました。

本丸: 現在の県庁駐車場付近に位置し、本丸御殿がありました。南東側以外は堀で囲まれていました。東側（現：県庁東分庁舎付近）には御霊社や役所、弾薬庫などがあり、南側（現：紅葉山公園）は美しい庭園でした。南西側（現：福島県庁）には馬場や鉄砲場、武器庫などがあり、軍事色の強い空間でした。
内堀: 本丸をはじめとする主要施設を囲んでいました。南側は阿武隈川が天然の堀として機能していました。
内曲輪（門）: 内堀を越える主要な門として、大手門、西門、北門、東門などがありました。
内堀外: 内堀の外側には、北から西にかけて侍屋敷や練兵場などの軍事施設、東側には米蔵などの経済関連施設が配置されていました。
外堀: 城域全体をさらに囲むように、西側、北側、東側に設けられていました。外堀の外側には寺院が集まる寺町や、宿場町が広がり、奥州街道がこれらを貫いていました。
外曲輪（見附）: 外堀を越える出入口には見附が置かれ、密語橋口、城道口、馬場町口、大手口、三の丸口などがありました。

特に大手門は城の北側に位置する正門で、二階建ての櫓門造りの立派な門でした。現在の県庁通り付近にあり、この門に続く道は長く「大門通り」と呼ばれていました。また、南側の密語橋口は外堀の出入口で、見附番所が置かれていました。ここに架かっていた密語橋は、福島の民話「王老杉伝説」の舞台としても知られ、縁結びにご利益があると伝えられています。現在の杉妻会館の庭園には、この橋を模した石橋が残されています。

城郭の主要施設は、明治時代に陸軍鎮台分営が設置された際に、そのほとんどが取り壊されてしまいました。

遺構と遺物

現在、福島城の遺構として明確に確認できるものは多くありませんが、当時の面影を偲ばせるものがいくつか残っています。

紅葉山公園: かつて本丸南側にあった庭園の跡地で、内堀の土塁の一部を見ることができます。
内堀土塁跡: 福島県庁西庁舎の南側や福島第一小学校の敷地にも、内堀を構成していた土塁の一部が現存しています。
* 密語橋と外堀跡: 杉妻会館の庭園には密語橋を模した石橋があり、周辺の裏路地には外堀の石積みが一部残されています。また、かつての外堀跡に沿って石畳が敷かれています。

発掘調査により、城に関連する遺物も出土しています。2001年の調査では、伊達氏の家紋である「三引両」が施された漆器が見つかり、伊達氏時代の城との関係を示す重要な証拠となりました。2014年の調査では、江戸時代の陶磁器、木製品、城のものと思われる瓦に加え、古墳時代の土器なども発見されており、この地の長い歴史を物語っています。

旧称について

福島城は、大仏城や杉妻城（杉目城）と呼ばれていた時期があります。

大仏城（だいぶつじょう）という名称について、一部で「おさらぎじょう」と読まれることがありますが、これは近代の誤読が広まったものです。「大仏」を「おさらぎ」と読むのは、鎌倉大仏のように特定の地名に関連する場合に限られます。福島城跡に隣接する大仏橋などに「おさらぎ」という読みが用いられる例もありますが、これは歴史的な読み方ではありません。

杉妻城・杉目城（すぎのめじょう）という名称は、現在の旧城下町から福島城南エリアにかけての地域一帯を指す「杉妻・杉目」という地名に由来しています。現在の「すぎつま」という読みは、明治時代に旧城郭内の地名として「杉妻町」が採用されたことに端を発しています。本来の地域名としては「すぎのめ」が使われており、現在の杉妻支所管轄エリアの読み方として残っています。

現在の福島県庁周辺に広がる福島城跡は、古代から現代に至るまで、福島の政治・文化の中心地であり続けた場所の歴史を今に伝えています。

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