福島県女子師範学校遭難事故

福島県女子師範学校遭難事故

1926年（大正15年）9月17日、吾妻山で発生した福島県女子師範学校の教員・生徒らによる集団登山中の遭難事故です。悪天候により145名が遭難し、うち4名が疲労凍死（低体温症）で亡くなりました。

事故の経緯

登山計画

1926年9月16日、福島県女子師範学校の教員4名（うち女性1名）と生徒138名（4年生65名、2年生73名）は、翌日の吾妻山集団登山のため、高湯温泉の2つの宿に分宿しました。当初は日帰りでの登山が予定されていました。

登山決行

翌17日朝、天候は曇り空で、吾妻山には低い雲が垂れ込めていました。引率責任者の男性教員は、測候所に電話で問い合わせましたが、「風雨やや強し」との回答でした。教員間では意見が分かれましたが、登山を強く希望する生徒たちの声に押され、引率責任者は登山を決行しました。生徒たちはこの決定に歓声をあげたと伝えられています。

遭難

午前6時20分、教師・生徒全員と案内人2名、カメラマン1名が高湯温泉を出発しました。当時、磐梯吾妻スカイラインはなく、一行は一切経山を越えて五色沼へ向かいました。しかし、険しい道で生徒たちが疲労し始め、午前11時20分頃から雨が降り出し、30分後には強風豪雨となりました。雨具を持たない生徒も多く、現場は混乱しました。引率責任者は鎌沼方面への脱出を試みましたが、集団は3つに分断されました。

帰還

先頭集団は往路に気づき、男性教員の判断で引き返して午後3時40分に高湯温泉に到着、遭難を知らせました。第2集団は別の男性教員と案内人が率い、硫黄採掘場を経由して午後6時30分に高湯温泉に帰還しました。しかし、引率責任者を含む残りの集団は、道に迷い、強風豪雨にさらされました。2年生の女生徒2名、案内人の若主人、カメラマンの4名が意識不明となり、引率責任者は生徒と共にビバークを決定しました。女性教員の激励を受けた他の生徒たちは自力で往路に戻り、午後8時25分に高湯温泉に帰還しました。

死亡確認と帰還

引率責任者は、夜間に月明かりで死亡を確認し、残った生徒たちを連れて下山を開始。翌日午前4時40分に高湯温泉に帰還しました。

事故の影響

この事故をきっかけに吾妻山の登山道整備が進められ、翌1927年に完成しました。現在、五色沼西岸には、4名の犠牲者を悼む「福島女子師範生遭難碑」が建てられています。

教訓

この事故は、悪天候時の登山の危険性、事前の準備と適切な判断の重要性を教えてくれます。また、集団行動におけるリーダーシップと連携の重要性も浮き彫りにしました。この悲劇を教訓として、安全な登山を心がけることが重要です。

参考資料

春日俊吉「五色沼湖畔の哀歌（吾妻山）」『山の遭難譜』二見書房、1973年、pp.66-77

関連項目

* 木曽駒ヶ岳大量遭難事故：本件同様、大正年間に起きた学校登山での事故

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