一切経山

一切経山

一切経山（いっさいきょうざん）は、福島県福島市と猪苗代町の境界にそびえる山で、吾妻連峰を構成する一峰です。標高1,948.8メートルを誇るこの山は、現在も火山活動を続ける活火山であり、山頂部は岩礫に覆われた荒涼とした景観が特徴です。

歴史

その名の由来は、古代に安倍貞任が仏教の経典「一切経」を山に埋めたという伝説にちなむとされています。ただし、弘法大師や地元の僧が埋めたという説も存在し、吾妻山信仰との関連も指摘されています。1893年には大規模な噴火が発生し、噴煙は直径2,000メートル、噴出物の量は約50万立方メートルにも達しました。この噴火では、調査中の技師2名が犠牲になるという悲劇も起きています。近年では、1977年にも噴火が発生し、2008年には山頂付近で噴気が確認されています。

登山

概要

磐梯吾妻スカイラインを利用することで、標高1,600メートルの浄土平まで車やバスでアクセス可能です。不動沢登山口からは、木々に覆われた登山道を進み、簡易鉄橋を渡ると、徐々に傾斜が増し、周囲の樹木の様子も変化していきます。家形山分岐に到達すると、神秘的な「魔女の瞳」または「吾妻の瞳」と呼ばれる五色沼が姿を現します。五色沼は、太陽光の当たり具合によってコバルトブルーの色合いが変化し、その美しさは見る者を魅了します。五色沼の西側を回り込み、山頂まではガレ場が続きます。山頂からは360度のパノラマが広がり、北には五色沼、東には阿武隈高地と福島盆地、南東には吾妻小富士、西には磐梯山、北には蔵王山や仙台平野、北西には置賜盆地などを一望できます。

標準時間

一般的な登山ルートの所要時間は、以下の通りです。

不動沢登山口 → 1時間30分 → 追分分岐
追分分岐 → 1時間00分 → 家形山分岐
家形山分岐 → 40分 → 山頂
山頂 → 30分 → 家形山分岐
家形山分岐 → 40分 → 追分分岐
追分分岐 → 1時間10分 → 不動沢登山口

合計で約5時間30分程度の行程となります。

以前は、浄土平ビジターセンター裏から浄土平湿原を横断し、大穴噴火口を経由するルートが一般的でしたが、2014年から噴火警戒レベルが引き上げられたため、一部区間が通行禁止となりました。その後、2016年に噴火警戒レベルが引き下げられ、通行止めは解除されています。

山小屋

山中には、以下の山小屋があります。

吾妻小舎（桶沼付近、有人、有料）
酸ヶ平避難小屋（酸ヶ平湿原、無人、無料、約10人収容）
谷地平避難小屋（谷地平、無人、無料、約10人収容）

周辺の風景

一切経山の南側には、鎌沼を中心に、酸ヶ平湿原、姥ヶ原が広がります。この一帯は、火山活動の影響が少ないため、多種多様な高山植物が咲き誇り、特に鎌沼周辺はまるで自然の庭園のような美しさです。姥ヶ原から西へ約1時間歩くと、谷地平湿原があり、初夏にはワタスゲが咲き乱れます。湿原の中央を流れる清流が、幻想的な風景を作り出しています。

自然だけでなく、姥ヶ原には姥神石像、南西には駕篭山稲荷神社があり、吾妻山信仰の名残が残っています。また、登山口となる浄土平は、観光地としても人気があり、レストハウスやビジターセンター、天文台などが整備されています。周辺には吾妻小富士や浄土平湿原、桶沼などの遊歩道が整備されており、散策を楽しむこともできます。

交通アクセス

浄土平へは、福島駅西口から高湯街道、高湯温泉、磐梯吾妻スカイラインを経由して約1時間でアクセスできます。磐梯吾妻スカイラインは、福島市と会津方面を結ぶ重要な道路でもあり、観光だけでなく、移動にも利用されています。

ギャラリー

脚注

関連項目

磐梯朝日国立公園
日本三百名山
環境省

外部リンク

浄土平ビジターセンター
国土[地理院地図]]閲覧システム 2万5千分1地形図名：[[吾妻山]

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