福島県立岩瀬農業高等学校

福島県立岩瀬農業高等学校は、福島県岩瀬郡鏡石町に位置する県立の農業高等学校です。地域からは親しみを込めて「岩農（がんのう）」と呼ばれており、同じ通称を持つ学校として、北海道岩見沢農業高等学校があります。福島県の中通り中部地方では唯一の農業系専門高校として、地域農業の振興と次代を担う人材育成に貢献しています。

本校の概要として、まずその恵まれた立地が挙げられます。近隣には広大な岩瀬牧場が広がっており、春には学校と牧場を結ぶように桜並木が美しい景観を創り出します。また、国際交流にも積極的で、オランダのホウテン農業高校と活発な交流を行っています。教育面での大きな特色は、農産物の安全性や環境保全、労働安全などに関する国際的な認証であるグローバルGAPの取得に力を入れている点です。2018年には福島県内の農業高校として初めて6品目で認証を取得し、さらに2019年には認証品目数を合計11品目へと増やしました。この11品目という数は、2019年11月時点において高校として日本最多であり、本校の教育水準と生徒たちの取り組みの成果を示すものと言えます。

本校には、農業分野の多様なニーズに応えるため、6つの専門学科が設置されています。生物生産科、園芸科学科、ヒューマンサービス科、食品科学科、アグリビジネス科、環境工学科があり、それぞれの学科で各40名の生徒を受け入れています。生徒たちは入学後、各学科の専門科目を学びますが、さらに2年次からは、選択した学科の中で設けられた複数のコースに分かれ、より専門的かつ実践的な学びを展開します。例えば、生物生産科では植物科学と動物科学、園芸科学科では園芸生産とバイテク、ヒューマンサービス科では園芸デザインと園芸福祉、食品科学科では食品製造と食品衛生、アグリビジネス科では食品流通と生産情報、環境工学科では農業土木と環境緑化といったように、自身の興味や将来の目標に合わせて深く学ぶことができます。

学校の歴史は古く、1908年に西白河郡農学校として現在の白河市で創立されました。その後、1913年に県へ移管され、福島県農学校と改称。1922年には現在の須賀川市へ移転するとともに、福島県立岩瀬農学校となりました。第二次世界大戦後の学制改革により、1948年に現在の校名である福島県立岩瀬農業高等学校となり、同時に定時制課程も併設されました。同年には長沼分校も開設されています。夜間定時制課程は1955年に福島県立須賀川第二高等学校（後の福島県立あさか開成高等学校須賀川校舎）として分離独立し、長沼分校も1972年に福島県立須賀川高等学校へ移管されました。現在地である岩瀬郡鏡石町への移転は1975年に完了しました。その後も教育内容の改善は続けられ、2003年には学科の改編が行われています。そして2018年には創立111周年を迎え、伝統校としての歴史を刻んでいます。

卒業後の進路としては、農業分野をはじめとする様々な産業分野への就職を希望する生徒が多い傾向にあり、近年では高い就職率を維持しています。例えば2018年度には、就職希望者全員が内定を獲得しました。また、大学や専門学校への進学を選択する生徒もおり、2023年度には福島大学食農学類へ2名の合格者を輩出するなど、多様な進路を支援しています。

部活動も盛んで、生徒たちは文武両道を目指しています。特に、軟式野球部は1970年に全国高等学校軟式野球選手権大会で優勝旗を手にし、全国制覇を成し遂げた歴史を持ちます。また、馬術部も輝かしい実績を残しており、2016年には第50回全日本高等学校馬術競技大会（インターハイ）で全国優勝を果たしました。その後も実力を維持し、2019年にも同大会で第3位入賞という好成績を収めています。

交通アクセスとしては、JR東北本線の須賀川駅または鏡石駅から福島交通バスを利用し、「岩農行き」の終点で下車することができます。

本校は、長い歴史の中で地域農業教育の中心を担ってきました。著名な出身者には、歌手の伊藤久男氏、元福島県議会議長や元自民党参議院議員を務めた添田増太郎氏、柔道家の遠藤純男氏、元競輪選手の木野内高氏、元女子競輪選手の須藤稚明氏、元福島県議会議長や元全国都道府県議会議長会会長を務めた植田英一氏などがいます。

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