福田一雄

福田一雄は、1931年9月26日に東京都で生まれました。幼い頃から母親の教育方針により絶対音感を身につけ、モスクワ音楽院教授のポール・ヴィノグラードフにピアノを師事しました。学習院初等科から大学まで進学する中で、ピアノの才能を生かしてジャズバンドでの演奏や進駐軍クラブでの活動を通じて音楽の腕を磨きました。また、近衛秀健の紹介により、東宝交響楽団（現在の東京交響楽団）や東京フィルハーモニー交響楽団などでピアニストとして活躍しました。

大学在学中は、音楽活動と並行して学業にも励んでいましたが、次第に音楽活動が忙しくなり、大学を中退して音楽家の道に進むことになりました。バレエ教室のレッスンピアニストやバレエ団公演でのピアノ演奏を数多くこなし、谷桃子や貝谷八百子などの著名なバレリーナの公演を支えました。特に貝谷八百子がプロコフィエフの『シンデレラ』を日本で初演した際には、約1年にわたり貝谷バレエ団でレッスンピアニストを務め、その際に高田信一から和声や指揮法を学びました。

当初は趣味として音楽を続けるつもりでしたが、大学中退後は、小牧バレエ団、橘バレヱ学校、越智實バレエ団、法村・友井バレエ団など、様々なバレエ団でピアニストを務める傍ら、高英男や淡谷のり子などの歌手の旅公演にも同行しました。1952年には、子供向けのバレエ曲『白雪姫』を作曲し、NHKのテレビ放送開始記念番組で自ら指揮しました。この作品は、多くのバレエスタジオで定番のレパートリーとなり、広く親しまれています。1957年には、日本フィルハーモニー交響楽団を指揮してバレエ指揮者として正式にデビューしました。

長年にわたり、バレエ公演の指揮活動を続ける一方で、ライフワークとしてバレエ音楽の研究にも取り組んでいます。また、新国立劇場バレエ研修所ではバレエと音楽の講師を務め、後進の育成にも尽力しています。2007年には、シアターオーケストラトーキョーの音楽監督にも就任し、その手腕を発揮しました。これらの功績が認められ、「舞踊ペンクラブ賞」や「橘秋子特別賞」を受賞し、2023年にはニムラ舞踊賞を受賞しました。

著書に『バレエの情景』（1984年）があり、バレエ音楽への深い知識と愛情が伺えます。福田一雄は、日本のバレエ界において、作曲家、指揮者、研究者、教育者として多岐にわたり活躍し、その情熱と才能は、多くの人々に影響を与え続けています。

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