高英男

高 英男 (こう ひでお)

高英男（本名: 吉田英男）は、1918年10月9日生まれの歌手および俳優である。樺太（現在のサハリン）出身の彼は、日本でのシャンソン普及において重要な役割を果たし、初代シャンソン歌手と称される存在である。高は独自の魅力を持ち、国内外で幅広く活動した。

幼少期と音楽への道

高は大正7年に樺太泊居町で生まれ、8人兄弟の末っ子であった。生まれてすぐに母方の伯母の元で育てられ、従弟と共に東京での生活を始める。東京では映画や舞台を観る機会に恵まれ、芸能界での関心が高まった。そこで、父親の期待に反して武蔵野音楽学校に進学し、音楽の道を進む。

彼の音楽キャリアは1936年に始まり、この年にコーラスグループ「コーロエーコー」に加入。1942年には日本大学を卒業したが、戦争の影響で徴兵された。この頃から歌唱活動も活発になり、戦後の1945年にはNHKの音楽番組に引っ張りだことなり、その名を広めていく。

シャンソンの第一人者

高英男は日本で初めて「シャンソン歌手」と名乗った人物であり、中原淳一の影響を受けながらその道を切り開いた。シャンソンだけでなく、タンゴやポピュラー音楽、オリジナルの流行歌など多岐にわたる楽曲を手がけ、日本の舶来音楽の普及にも尽力した。特に「枯葉」「雪の降る町を」などの名曲で知られ、その幅広い音楽性が評価されている。

高は自身の舞台化粧でも知られており、中原淳一の提案により、男性版宝塚にインスパイアされた化粧で観客を楽しませた。また、彼と中原の間には深い友情と共に恋愛関係があったとされ、互いに影響を与え合った。

フランス留学とその後

1951年、高はフランス・パリに留学し、ソルボンヌ大学で学びながら現地の音楽にも触れた。1952年には帰国し、日本でリサイタルを開催するとともに、フランスから得たシャンソン作品を日本で初めて披露した。これにより「日本人のシャンソン歌手第一号」としての地位を確立する。

その後もフランスと日本を行き来し、両国で精力的に活動を続けた。シャンソンだけでなく、様々な舞台にも出演し、特に日劇ではトップスターとして活躍した。外交的な活動を通じて、シャンソンだけでなく日本の歌謡界にも多大な影響をもたらした。

俳優としての活躍

高英男は俳優としても活動し、特に石井輝男監督の作品に多く出演。ギャング役や宇宙人の役に挑戦し、ユニークなキャラクターで観客を楽しませた。特に「吸血鬼ゴケミドロ」ではその演技が大きな話題となり、公開当時は多くの注目を浴びた。

健康状態と晩年

晩年には健康が優れず、何度も入院することとなるが、歌手としての活動は続ける。1974年には帝国劇場でのリサイタルが成功を収め、名誉を注がれた。2009年5月4日、肺炎により90歳でこの世を去るまで、多くの人々に音楽と笑顔を届けた。

彼の作品や活動は、今も多くのアーティストたちに受け継がれている。高英男は歌手としての生涯を通じて、多くの人に影響を与え続けた日本の偉大なシャンソン歌手として記憶されるだろう。

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