福田甲子雄

福田 甲子雄（ふくだ きねお）

日本の俳人。1927年8月25日、山梨県中巨摩郡飯野村（現在の南アルプス市飯野）に生を受けた。2005年4月25日逝去。享年78歳。

俳歴

福田甲子雄は、戦後の混乱期から俳句の道を歩み始めた。1947年、当代を代表する俳人であった飯田蛇笏が選者を務める「春夏秋冬」への投句を契機に、蛇笏が主宰する俳句誌「雲母」へ入会。飯田蛇笏に師事し、俳句の基礎と精神を学んだ。蛇笏の薫陶を受けた後、1960年からはその長男である飯田龍太の選を受け、龍太に師事するようになった。師系を継ぐ両師に学びながら、自身の俳句世界を確立していった。

1963年からは、「雲母」の編集同人として、誌の運営や後進の指導にも深く関与した。句作のみならず、俳句界の発展にも貢献した期間は、「雲母」が終刊を迎える1992年まで長期に及んだ。終刊後も、盟友である廣瀬直人が主宰する「白露」の同人として、その晩年まで俳句活動を継続した。

作風と評価

福田甲子雄の作品は、生まれ育った山梨の豊かな自然、特に盆地や山間部の風土を深く詠み込んだ「重厚な風土性」と、古典に裏打ちされた「格調の高さ」を特色としていると広く評価されている。日常の景や人情を、情感豊かに、かつ確かな描写力をもって捉え、独自の俳句世界を築き上げた。その句は、平明でありながら深い奥行きを持ち、読む者に静かな感動を与える。

俳人としての功績は高く評価され、1969年には第5回山盧賞、2002年には第25回野口賞を受賞している。そして、俳句界における最高の栄誉の一つとされる蛇笏賞を、2004年、句集『草虱』により受賞したことは、その俳業の結実を示す出来事であった。

主な著作

福田甲子雄は生涯にわたり多くの句集、評論集、入門書などを刊行した。その主なものを以下に挙げる。

句集

『藁火』（1971年）
『青蝉』（1974年）
『白根山麓』（1982年）
同文庫版（邑書林俳句文庫、1998年）
『山の風』（1987年）
『盆地の灯』（1992年）
『福田甲子雄句集』（1994年）
『草虱』（2003年）
『師の掌』（2005年）
『福田甲子雄全句集』（2018年） - 没後刊行

評論集・その他

評論集『人と作品・飯田蛇笏』（角川源義と共著、1973年）
評論集『飯田龍太』（1985年）
俳句鑑賞『龍太俳句365日』（1991年）
入門書『入門講座 肌を通して覚える俳句』（1999年）
俳句鑑賞『忘れられない名句』（2004年）

晩年と死去

2004年に蛇笏賞を受賞したものの、同年、胃癌の手術を受けて自宅での療養生活に入った。しかし、病状は回復せず、翌2005年に再び入院することとなった。そして2005年4月25日、心不全のため、生まれ故郷である南アルプス市内の病院で波瀾の生涯を閉じた。享年78歳であった。

親族

長男に、実業界で活躍した福田修二氏（元太平洋セメント社長、元セメント協会会長などを歴任）がいる。

参考文献・関連情報

金子兜太編 『現代の俳人101』（新書館、2004年）
坂口昌弘著 『平成俳句の好敵手』（文學の森）
現代俳句人名事典における福田甲子雄の項目（現代俳句協会）
* 福田甲子雄作品に関連する鑑賞・評論等

もう一度検索