蛇笏賞

蛇笏賞（だこつしょう）

蛇笏賞は、近代俳句における巨人である俳人、飯田蛇笏（いいだ だこつ）の顕彰と功績を記念して創設された文学賞です。日本の俳句界において、最も栄誉ある賞の一つとして広く認知されています。

この賞は、原則として前年の1月1日から12月31日までの期間に刊行された句集の中から、特に芸術的、文学的に傑出していると認められる一冊を選出し、その作者に授与されます。

沿革と主催

蛇笏賞は、1967年に第1回が開催されました。当初は株式会社角川書店が主催していましたが、現在は公益財団法人角川文化振興財団がその役割を担っています。半世紀以上にわたる歴史を持ち、この間、日本の俳句の発展に寄与し、多くの優れた俳人の業績を顕彰してきました。

賞の内容と授賞式

受賞者には、その栄誉を称える賞状と記念品が贈られるほか、副賞として100万円が授与されます。

授賞式は毎年6月に開催されるのが通例です。この式典は、同じく角川文化振興財団が主催する短歌の主要な賞である迢空賞（ちょうくうしょう）の授賞式と合同で執り行われ、俳句と短歌、両歌壇の重要な交流の場ともなっています。

選考プロセス

選考は、俳句界を代表する権威ある選考委員によって厳正に行われます。選考委員の構成は時代とともに変化しており、多くの著名な俳人がその任を務めてきました。例えば、歴代の委員には飯田龍太、金子兜太、森澄雄、宇多喜代子、鷹羽狩行、有馬朗人、長谷川櫂といった大家が名を連ねています。2024年現在の選考委員は、高野ムツオ、高橋睦郎、中村和弘、正木ゆう子の各氏です。

選考過程の透明性に関しては、かつて最終候補作が非公表であった時期がありましたが、2013年の第47回からは事前に公表される方式に変更されました。これにより、選考の行方が事前に注目されるようになり、俳句愛好者の関心も高まっています。

歴代受賞者

第1回の皆吉爽雨氏の受賞以来、蛇笏賞はその時代の俳句を牽引する多くの作家たちに授与されてきました。初期には加藤楸邨氏、秋元不死男氏、大野林火氏、福田蓼汀氏、平畑静塔氏、右城暮石氏などが受賞し、その後の世代からも細見綾子氏、斎藤玄氏、能村登四郎氏、長谷川双魚氏、森澄雄氏、三橋敏雄氏など、日本の俳句史に大きな足跡を残した俳人たちが続々と名を連ねています。

また、宇多喜代子氏、金子兜太氏、鷹羽狩行氏、有馬朗人氏といった現代俳壇を代表する作家たちも受賞しており、近年では高野ムツオ氏、正木ゆう子氏、大牧広氏、柿本多映氏、小川軽舟氏、小澤實氏、三村純也氏などが受賞しています。中には、選考の結果「該当作なし」となった回（例えば、第22回、第25回、第56回など）や、複数の受賞者が出た回もあります。これらの受賞者の顔ぶれは、戦後から現代に至るまでの日本の俳句の多様な展開を示唆するものと言えるでしょう。

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