福野礼一郎

福野礼一郎：自動車評論家としての軌跡と独自の視点

福野礼一郎氏（1956年 - ）は、日本を代表する自動車評論家の一人です。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務めた彼のキャリアは、走り屋系雑誌編集者から始まり、数々の自動車専門誌や一般誌への寄稿を経て、独自のスタイルを確立してきました。

雑誌編集者からフリーの評論家へ

1980年代前半には、走り屋文化を色濃く反映した雑誌『オプション』で編集者としてのキャリアをスタートさせます。その後、外車専門誌『ゲンロク』の編集長代行も経験。1988年頃からフリーランスの自動車評論家として活動を始め、『カー・アンド・ドライバー』をはじめとした多くの媒体で連載を持つようになりました。

「TOKYO中古車研究所」：中古車の魅力を深く掘り下げる

1994年頃からは、『CarEX』誌で「TOKYO中古車研究所™（略称：T中研™）」の連載を開始。この連載は、中古車の魅力を多角的に捉え、単なる試乗記にとどまらない深い考察が特徴でした。後に『くるまにあ』誌に移籍し、2004年まで続いたのち、一時休載。しかし2006年には姉妹誌『特選外車情報エフロード』で復活を遂げます。

「TOKYO中古車研究所」は、福野礼一郎氏を中心に、中古車販売業の荒井克尚氏ら複数のメンバーで構成されていました。各メンバーが執筆した記事を不定期に掲載する形式で、試乗記、座談会、メカニズム解説など多様な内容を取り上げていました。連載当初は、別誌向けに企画された記事の流用から始まりましたが、次第に試乗記が中心となります。

「東京メトロテスト」と称した、都内同一コースでの試乗比較は、年代の異なる車両を比較できる画期的な企画でした。また、サイクルスポーツセンターでのスポーツ走行による比較も行われていました。しかし、連載後期にはコスト面の問題から、コース貸切が困難となり、こうした大規模な企画は減少していきます。

記事のクレジットは、当初「有限会社MPI」名義でしたが、後期は「エフロード編集部＋福野礼一郎」へと変更されました。西山氏（MPI）も文責としてクレジットされています。

車への深い愛情と造詣

福野氏の評論は、自動車部品や製造工程、材質といった技術的な側面への深い造詣に基づいています。単なる走りの印象だけでなく、クルマが作られる背景までを考察する視点が、多くの読者を魅了しました。彼は30年間で39台もの車を所有した経験を持ち、その経験に基づく独自の視点は、彼の文章に深みを与えています。

愛車遍歴：多様な車種への造詣

フェラーリ、ポルシェ、ビュイックなど、多岐にわたる車種を所有してきた福野氏。特にフェラーリへの愛着は強く、複数台のフェラーリを所有してきた経験は、彼の評論に反映されています。また、ロールス・ロイス・シルヴァースピリットのレストア経験など、クルマへの情熱は並々ならぬものがあります。

1981年式トヨタ・セリカXX 2800GTは、新車で購入しボルトオン・ターボで改造、オプション誌のテストカーとして使用されたというエピソードは、彼の初期の活動を知る上で重要なものです。

現在の連載と著書

現在も、『特選外車情報エフロード』、『カーグラフィック』、『ル・ボラン』、『ゲーテ』、『モーターファン・イラストレーテッド』、『モーターファン』など、様々な媒体で連載を持ち続けています。

さらに、数多くの著書も出版しており、その中には、彼が長年培ってきた知識と経験、そして自動車に対する独自の視点が凝縮されています。

まとめ

福野礼一郎氏は、雑誌編集者としての経験、多様な愛車遍歴、そして数々の連載や著書を通して、日本の自動車文化に多大なる貢献を果たしてきました。彼の文章は、単なる自動車評論にとどまらず、自動車を取り巻く社会や文化、歴史への深い洞察を示しています。今後も、彼の活動を追い続けることが、日本の自動車文化を理解する上で重要な要素となるでしょう。

もう一度検索