福隆寺縄手の戦い

福隆寺縄手の戦い

福隆寺縄手の戦い（ふくりゅうじなわてのたたかい）は、平安時代末期の寿永2年（1183年）10月、備前国福隆寺縄手（現在の岡山県岡山市北区）で繰り広げられた合戦です。この戦いは、木曾義仲率いる源氏軍と、平氏方の武将妹尾兼康が率いる軍勢との間で起こり、治承・寿永の乱における重要な戦いの一つとして知られています。

戦いの背景

この戦いの背景には、源平合戦の激しい動乱がありました。平氏一門は、それまで朝廷で権勢を誇っていましたが、源氏の台頭によりその勢力は衰退していました。特に、木曾義仲は、倶利伽羅峠の戦いで平氏軍を打ち破り、その勢いを増していました。一方、妹尾兼康は、平氏譜代の家人として、平氏のために戦ってきた武将でした。

兼康は、保元・平治の乱でも平氏軍に属して戦い、平清盛の側近として活動していました。しかし、倶利伽羅峠の戦いで平氏軍が敗北すると、兼康は義仲軍に捕らえられます。義仲は兼康の武勇を惜しみ、助命しますが、兼康は義仲に従いながらも、機会をうかがっていました。

戦いの経過

平氏が都落ちした後、兼康は義仲軍に加わり西国へ向かいますが、水島の戦いで義仲軍が敗北すると、兼康は自領の備前国妹尾荘に倉光成氏を誘い出して殺害し、反旗を翻します。妹尾宗康や他の平家方の武士たちを集め、二千余りの軍勢で福隆寺縄手に要塞を築き、木曾軍に対抗します。

木曾軍は、この反乱を鎮圧するために大軍を送り込みました。兼康軍は激しく抵抗しましたが、寄せ集めの軍勢であり、木曾軍の猛攻に耐えきれず、城郭は陥落してしまいます。兼康は落ち延びようとしましたが、息子宗康を案じて引き返し、今井兼平の軍勢に突入し、壮絶な討ち死にを遂げました。

戦いの後

義仲は、備中国鷺が森にかけられた兼康主従三人の首を見て、その武勇を惜しんだと言われています。この戦いは、『平家物語』巻八「瀬尾最期」に、平家忠臣の悲劇的な最期として描かれています。

福隆寺縄手の戦いは、源平合戦の終盤における一局面であり、平氏残党の抵抗と、その悲劇的な結末を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

参考文献

『源平合戦人物伝』　学研、2004年。（妹尾兼康項）
『平家物語』全訳註（八）　講談社学術文庫、1987年。

関連項目

* 水島の戦い

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