私を野球につれてって (映画)

私を野球につれてって

『私を野球につれてって』（原題：Take Me Out to the Ball Game）は、1949年に公開されたアメリカ合衆国のテクニカラーミュージカル映画です。上映時間は93分、スタンダードサイズ（アスペクト比1.37:1）で製作されました。主演は当時の人気スターであるジーン・ケリーとフランク・シナトラが務めています。

映画のタイトルおよび題材は、アメリカで広く親しまれている野球に関する愛唱歌「私を野球に連れてって」（Take Me Out to the Ball Game）にちなんでいます。

ストーリー

物語は1908年を舞台に展開します。架空のプロ野球チーム「ウルブズ」に所属する選手、エディ・オブライエン（ジーン・ケリー）とデニス・ライアン（フランク・シナトラ）は、シーズンオフになると舞台芸人として活躍するという変わった顔を持っていました。ある日、チームに新しい女性オーナー、K.C.ヒギンズ（エスター・ウィリアムズ）が就任します。魅力的で有能なK.C.に、エディとデニスは揃って惹かれてしまい、友情と恋の間で複雑な関係に陥ります。

また、デニスは熱狂的な女性ファン、シャーリー・デルウイン（ベティ・ギャレット）から執拗に追い回されるという個人的な悩みも抱えています。彼らの平穏な日々は、野球賭博で大金を稼ごうとするギャングたちがチームに近づいてきたことで一変します。選手たちは、自分たちの野球を守るため、ギャングたちと対峙することになります。歌、ダンス、コメディ、そしてサスペンスの要素が織り交ぜられた物語が展開されます。

キャスト

デニス・ライアン：フランク・シナトラ
エディ・オブライエン：ジーン・ケリー
ナット・ゴールドバーグ：ジュールス・マンシン
K.C.ヒギンズ：エスター・ウィリアムズ
シャーリー・デルウイン：ベティ・ギャレット
ジョー・ローガン：エドワード・アーノルド
* マイケル・ジルフリー：リチャード・レイン

※パブリックドメインDVDには日本語吹替が収録されています（上記キャスト欄の括弧内は日本語吹替担当者）。

スタッフと製作秘話

監督は、水のレビューシーンで知られるバスビー・バークレーが担当しました。

製作過程ではいくつかの興味深いエピソードがあります。K.C.ヒギンズ役を演じたエスター・ウィリアムズは、主演のジーン・ケリーとの撮影が「本当に惨めだった」と自伝で述べています。彼女によれば、この役は当初ジュディ・ガーランドが演じる予定でしたが、ガーランドの薬物問題によりウィリアムズが代役を務めることになったといいます。また、フランク・シナトラが演じたデニス・ライアン役には、当初は実在のプロ野球選手レオ・ドローチャーの起用が検討されていたようです。

ウィリアムズは、ジーン・ケリーと共同振付師のスタンリー・ドーネンから軽視され、彼女の費用でいたずらされたと主張しています。身長が5フィート10インチと、5フィート7インチのケリーより高かったことも、彼にとって不快だった可能性を指摘しています。また、バスビー・バークレー監督はウィリアムズのために水中レビューシーンを企画しましたが、これはケリーによって却下されました。

評価と反響

本作は約400万ドルの興行収入を上げ、商業的には成功と見なされています。批評家からはおおむね肯定的な評価を受けましたが、一部からは「キャストは素晴らしいものの、映画全体として一貫したスタイルやテンポに欠ける」といった指摘もありました。

イギリスでは劇場公開され好評を得ましたが、日本では劇場未公開となりました。後に家庭用ビデオグラムとしてパブリックドメインDVDが発売された際、販売元によって邦題の表記にばらつきが生じました。例えば、2001年のワーナー・ホーム・ビデオ版では『私を野球につれてって』、2005年のオルスタック版では『私を野球に連れてって!』、2006年のファーストトレーディング版では『私を野球に連れてって』というタイトルで販売されています。

受賞歴

1950年の第2回全米脚本家組合賞において、脚本家のハリー・トゥージェンドとジョージ・ウェルズがミュージカル作品賞にノミネートされました。しかし、この賞は同じメトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）製作で、本作の4か月後に公開されたミュージカル映画『踊る大紐育』の脚本家、ベティ・コムデンとアドルフ・グリーンが受賞しました。『踊る大紐育』には、本作と同じくアーサー・フリードがプロデュースし、ジーン・ケリー、フランク・シナトラ、ベティ・ギャレット、ジュールス・マンシンといったキャストが出演しています。

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