秋に (グリーグ)

序曲『秋に』作品11 について

エドヴァルド・グリーグが1865年に作曲した演奏会用序曲『秋に』（I Høst）、作品11は、彼の初期の管弦楽曲の一つであり、交響曲ハ短調やピアノ協奏曲イ短調と並ぶ重要な作品です。この作品は、グリーグが若き才能を発揮し始めた時期の情熱と創造性が感じられます。

ゲーゼからの酷評とコンクール優勝

グリーグがコペンハーゲンを訪れた際、この作品をニルス・ヴィルヘルム・ゲーゼに見せたところ、「これは屑だ。帰ってもっとましなものを書くように」と酷評されました。しかし、グリーグはその後、この作品をピアノ二重奏版に編曲し、スウェーデン学士院のコンクールに提出したところ、見事首位を獲得しました。この時、審査員の一人にはかつて酷評したゲーゼも含まれていたという逸話があります。この出来事は、グリーグの不屈の精神と、自身の音楽に対する強い信念を示しています。

録音の歴史

『秋に』は、その知名度の割には録音に恵まれていない作品ですが、近年では多くの指揮者によって再評価が進んでいます。過去には、トマス・ビーチャム、カール・シューリヒト、モーリス・アブラヴァネルなどが録音を残しており、近年では、ネーメ・ヤルヴィ、オッコ・カム、ウーレ・クリスチャン・ルード、ビャルテ・エンゲセトといった指揮者たちが、この作品の魅力を引き出しています。これらの録音を通じて、この作品の美しさがより多くの人々に知られるようになりました。

楽器編成

この作品は、以下の楽器編成で演奏されます。

ピッコロ1
フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
バス・チューバ1
ティンパニ3
バス・ドラム
シンバル
トライアングル
弦楽五部

この豊かな楽器編成が、グリーグの音楽に彩りを添え、力強くも繊細な音色を生み出しています。

楽曲構成

楽曲は、ニ長調の序奏（アンダンテ）に始まり、ソナタ形式によるニ短調の主部（アレグロ）へと展開します。

序奏 (アンダンテ)
オーケストラの力強い和音と、対照的な輝かしい木管楽器の主題が提示されます。この序奏は、緊張感を徐々に高め、主部へと繋がる重要な役割を担っています。
主部 (アレグロ)
ニ短調の第1主題は、グリーグの歌曲「秋の嵐」から取られています。続く第2主題はヘ長調で、対比的な美しさを持ちます。展開部では、絶え間ない転調によって既存の主題が繰り返され、音楽はダイナミックに展開します。その後、ホルンと弦楽器による緩やかな楽節を経て、第1主題が再現され、再現部に入ります。最後に、序奏の木管主題が高らかに再現され、序曲は壮大に締めくくられます。

まとめ

序曲『秋に』は、グリーグの初期の才能と、音楽に対する情熱が込められた作品です。ゲーゼによる酷評を乗り越え、コンクールで優勝したというエピソードは、彼の音楽家としての成長を物語っています。この作品を通じて、グリーグの音楽の世界に触れてみてください。

外部リンク

* 《秋に》の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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