科学読物

科学読物とは

科学読物とは、主に子供向けに書かれた科学に関する書籍のことです。しかし、その定義は一つではなく、時代や研究者によって解釈が異なります。

科学読物の定義

図書館用語大辞典では、科学読物を以下のように定義しています。

狭義: 自然科学や科学技術に関する、主に児童青少年向けの科学の本・啓蒙書
広義: 科学者の伝記、科学小説、その他人文科学や社会科学系統の本。さらに、料理やスポーツなどの実用書や娯楽書であっても、科学的な視点に立って書かれているもの

このように、広義では非常に幅広いジャンルの書籍が科学読物に含まれると考えられています。

代田昇は、科学読物の歴史について触れ、戦前の「児童科学書」「科学童話」「理科童話」が、現在の「科学の本」「知識の本」「理科の本」に繋がると述べています。また、科学読み物という名称は1955年頃から使われ始めたものの、一般的に使われるようになったのは、吉村証子が主宰した「科学読み物研究会」の発足と、雑誌「理科教室」の特集がきっかけだと指摘しています。さらに、科学読物は自然科学的な要素が多いものを指して使われることが多いと述べています。

板倉聖宣は、科学を「仮説をもとにして実験観察を積み上げ、法則理論の体系をつくりあげていくような学問」と定義し、科学読物の役割を「その時代時代に正当とされていた自然についての知識を教えることではなく、そういう常識・権威ものりこえて、仮説をたて実験をすすめようという生き方を育てあげようとするもの」だと述べています。

中川宏（科学読物研究会）は、科学読物をノンフィクションに限らず、SFや動物文学などのフィクションでも、自然への鋭い洞察や正しい描写、自然や科学への幅広い関心を育てるものであれば、科学読物として捉えることができると述べています。

鷺谷昴は、科学読物の定義について、以下の2つの立場が共存していると指摘しています。

1. 仮説を立て、実験、観察を積み上げ、法則、理論の体系を作る学問のみを科学とし、子供の本についてもこの条件に合うものを科学読物とする立場
2. 自然科学の正確な描写、自然への洞察力、自然や科学に対する強い関心を育てるものであれば、SFや動物文学でも科学読物となりうる立場

これらの立場の中で、著者や編集者は2の立場を取る場合が増えているものの、まだ決定的な定義には至っていないと述べています。

吉見昭一は、科学読物の意義について、「野に咲く雑草や、木に止まりさえずる鳥の名も知らないで、自然を見る目は育たない」と述べ、子供たちが自然を観察し、事実を確かめながら自然を知ることが重要であると指摘しています。

科学読物の表記

「かがくよみもの」の表記には、「科学読物」「科学読み物」「科学よみもの」などがありますが、いずれも基本件名標目表（BSH）には記載されていません。

研究・団体

科学読物の研究および普及を目的とした団体として、科学読物研究会（1968-）や京都科学読み物研究会（1980-）があります。

まとめ

科学読物は、子供たちが科学に親しみ、自然に対する理解を深める上で重要な役割を果たします。その定義は多様ですが、科学的な視点に基づき、子供たちの知的好奇心を刺激する書籍であることは共通しています。科学読物は、単に知識を伝えるだけでなく、子供たちが自ら考え、実験し、観察する力を育むことを目指しています。

参考文献

板倉聖宣、名倉弘『科学の本の読み方すすめ方』仮説社、1993年。ISBN 4-7735-0105-7。
小川真理子、赤藤由美子『科学よみものの30年: そのあゆみとこれから』連合出版、2000年。ISBN 4-89772-161-X。

関連項目

科学読物研究会
日本科学読物賞

外部リンク

科学読物研究会
本となかよし－自然と科学－ - 科学読物が検索できるデータベース
* 京都科学読み物研究会

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