秩父鉄道デキ100形電気機関車

秩父鉄道デキ100形電気機関車

秩父鉄道デキ100形電気機関車は、第二次世界大戦後に日立製作所が各地の私鉄や専用線に供給した50t級電気機関車です。形態や製造時期により、以下の3つのグループに分類されます。

デキ101
デキ102 - デキ106
デキ107・デキ108

2020年終了時点では、デキ102・103・105の3両が在籍しています。

各車両の詳細

デキ101

1951年11月に秩父セメントの私有機として日立製作所で製造されました。製造当初の形式はデキ8で、自重は48tです。

車体

全長12mの箱形デッキ付き全溶接構造。
側面に出入り口がなく、乗務員は妻面中央の出入り口を使用。
側窓構造、側面腰部のルーバー、天井のモニター屋根など、同時期の国鉄EF15形の影響が見られる。
ナンバープレートは楕円形で小型、妻面のものは運転席側に取り付け。
竣工当時は茶色一色塗装。

主要機器

架線電圧1,500V昇圧を見越した設計で、当初より1,500V対応の電装品を搭載。
主電動機は日立HS-257Irを各台車に2基ずつ吊り掛け駆動で装架。
歯数比は牽引力確保のため73:16=4.56と高めに設定。
台車はウィングばね式軸箱支持機構と揺れ枕付き枕ばねを備える棒台枠台車。
制御器は電磁空気単位スイッチ式で、総括制御や発電制動は非搭載。
構内入れ替え作業を考慮し、主抵抗器の設計に配慮。
パンタグラフは電車用のPS13を搭載し、三角カーボンを擦板に採用。

運用

当初は秩父セメントの私有機として、影森から秩父地区工場への原石輸送に使用。
1980年9月に秩父鉄道へ車籍が移管。
他のデキ100形より自重が軽く、定格引張力も低いため、共通運用は難しかった。
デキ1形やED38形と共通運用で、一般貨物列車の牽引や構内入れ替えに充当。
1973年以降は青色に白帯の新標準色に変更。
1980年代以降、機器冷却用ルーバーの一部閉鎖、前照灯のシールドビーム化を実施。
1988年「SLパレオエクスプレス」のC58形後補機として起用。
1994年に茶色塗装に戻されたが、1996年に後補機を解任。
2006年3月31日付けで廃車後、「わくわく鉄道フェスタ」で展示。

デキ102 - 106

デキ101の増備車として、デキ102・デキ103が1954年、デキ104 - デキ106が1956年に製造されました。本グループ以降は当初よりデキ100形として竣工しています。

車体

基本的な構造はデキ101と共通だが、車体長が0.6m延伸され12.6mとなり、側窓が6枚に増加。
自重も2t増加し50t。
デキ102・103は角ばった車体、デキ104 - 106は正面四隅に丸みがついた。
ナンバープレートは楕円形だが、妻面のものは助士席側に取り付け。

主要機器

制御器、台車、駆動装置はデキ101に準じる。
主電動機は磁気回路容量を増強した日立HS-277Arを各台車2基搭載。
歯数比は73:18=4.05と高速寄りにシフト。
制御器は電磁空気単位スイッチ式手動加速制御器。
長時間の入れ替え作業を考慮し、主抵抗器の設計に配慮。
パンタグラフは日立K100Aを2基搭載し、三角カーボンを摺り板とする。

運用

主電動機の出力強化により、1,000t貨物列車の単機牽引が可能となり、デキ101とは運用が区分。
1970年代中盤以降、青に白帯の新塗色に変更。
前照灯のシールドビーム化、機器冷却用ルーバーの一部閉鎖を実施。
デキ106は2008年に脱線転覆事故を起こし、後に廃車。
デキ104は2013年に故障し、2015年に除籍。
デキ103は2011年に赤色+白帯塗装となったが、2014年に青色に戻された。

デキ107・デキ108

元々は松尾鉱業鉄道ED501・ED502として1951年に製造された車両です。1972年に秩父鉄道に譲渡され、改造・整備の上、1973年にデキ107・108として竣工しました。

車体

デキ101とほぼ同一構造の箱形全溶接構造車体。
妻面左右の窓上にひさし、警笛にカバーを備えるなど積雪地帯での運用を考慮した仕様。
譲渡後、一旦は茶色一色に裾部白帯の標準色に変更されたが、後に松尾鉱業鉄道時代の青色に白帯塗装に戻された。
秩父鉄道籍への編入に際し、ナンバープレートは手書き。

主要機器

26パーミルの連続勾配区間を擁する山岳線への投入を考慮し、デキ101より自重が重く設計。
主電動機は全密閉型の日立HS-277Arを搭載し、主抵抗器と共に電動送風機による強制冷却。
歯数比は75:16=4.68と低く設定。
制御器は電磁空気単位スイッチ式手動加速制御器で、発電制動も搭載。
台車はウィングばね式軸箱支持と揺れ枕付き枕ばねを採用した棒台枠台車。
雪の侵入を防ぐため、窓・扉・鎧戸通風器などに工夫。

運用

松尾鉱業鉄道では本線貨物列車牽引の主力機として活躍。
秩父鉄道入籍に当たり、耐寒設備の一部撤去、非常用発電制動の廃止を実施。
重量級貨物列車の牽引やELパレオエクスプレスとして客車牽引に起用。
デキ107は2015年に運用を離脱し、除籍。
デキ108は2020年12月に運用を離脱し、松尾鉱業鉄道に在籍していた車両は全て引退。

参考文献

「昭和26年度における日立技術の成果 16．鉄道車輛」『日立評論』、日立製作所、1952年1月, 226 - 227頁。
「昭和29年度における日立技術の成果 22．鉄道車輌」『日立評論』、日立製作所、1955年1月, 312 - 342頁。
『世界の鉄道’69』、朝日新聞社、1968年
『世界の鉄道’76』、朝日新聞社、1975年

関連項目

松尾鉱業鉄道

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