称往院

称往院（しょうおういん）

称往院は、東京都世田谷区烏山寺町に位置する浄土宗の寺院であり、この地域を特徴づける26の寺院の一つとして数えられています。

概要

称往院は1596年（慶長元年）に白誉称往上人によって開かれました。当初は湯島にありましたが、1657年（明暦3年）の明暦の大火によって浅草芝崎村（現在の東京都台東区西浅草）に移転しました。その後、1923年（大正12年）9月の関東大震災で被災し、1927年（昭和2年）に現在の場所に移転しました。

境内には、江戸時代の有名な俳諧師である宝井其角や、明治から大正にかけて日本の近代製鉄業の基礎を築いた田中家の墓があります。

蕎麦禁制の碑

称往院の門前左側には、「不許蕎麥地中製之而亂當院之清規故入境内」と刻まれた角柱の石碑が建っています。これは「蕎麦禁制の碑」と呼ばれ、次のような由来があります。

かつて浅草に称往院があった頃、境内には「道光庵」という塔頭がありました。道光庵の庵主は信濃国の出身で、蕎麦打ちの名人として知られていました。庵主が檀家の人々に蕎麦を振る舞ったところ、その評判が広まり、蕎麦を目当てに多くの人々が寺に集まるようになりました。しかし、人が集まりすぎたため、寺の本来の活動に支障をきたすようになり、ついに住職は蕎麦の提供を禁止しました。その旨を石碑に刻んで境内に立て、蕎麦を締め出したのです。移転の際、土に埋もれていたこの碑も掘り起こされ、現在の場所に移築されました。

現在、蕎麦屋の名称に「○○庵」という名前が使われることがありますが、これは道光庵の蕎麦の故事に由来すると言われています。蕎麦が寺院の歴史と深く関わっていたことを物語る興味深いエピソードです。

交通アクセス

• - 京王線千歳烏山駅より徒歩15分

参考文献

• - 世田谷区 編『小学生の烏山寺町あんない 付 世田谷の社寺と遺宝その2』世田谷区、1978年
• - 竹内秀雄 著『世田谷区史跡散歩 (東京史跡ガイド12)』学生社、1992年

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