稲垣良典

稲垣良典（いながき りょうすけ）

稲垣良典は1928年11月27日に佐賀県で生まれ、2022年1月15日に93歳でこの世を去った著名な中世哲学及び法哲学の研究者です。彼は九州大学の名誉教授であり、その研究は特に中世スコラ哲学において国際的に高く評価されています。彼の研究生活は、論文執筆と翻訳活動を通じて、哲学の発展にかなりの貢献を果たしました。特にトマス・アクィナスの『神学大全』の翻訳者として知られており、その難解なテーマを日本語で扱うことに尽力しました。

経歴概要

稲垣は戦後の1951年に東京大学文学部を卒業し、その後アメリカ・カトリック大学大学院に留学して、1955年にPh.D.を取得して帰国しました。この際の経験が、彼の哲学研究に多大な影響を与えました。帰国後は南山大学、そして九州大学の教授職に就き、教育と研究の両面で多くの功績を残しました。

1982年には東京大学に学位論文『習慣の哲学』を提出し、文学博士号を取得。その後、九州大学を退職し、福岡女学院大学や長崎純心大学でも教鞭を執った他、長崎純心大学ではキリスト教文化研究所の所長も務めました。

学問的な業績

稲垣の研究は中世スコラ哲学において第一人者とされ、特にエティエンヌ・ジルソンやジャック・マリタンの影響を受けたと言及されています。彼の業績は多数の著書や翻訳に残されており、トマス・アクィナスに関連する作品を中心に幅広い分野で活躍しました。

彼の代表的な訳書には、全45巻からなる『神学大全』があり、これは1977年から2012年にかけて完成しました。第Ⅱ・Ⅲ部の20冊分を担当し、この長大なプロジェクトは彼の生涯の一大業績として位置付けられています。改訂新版も刊行され、2022年には講談社からの「創文社オンデマンド叢書」シリーズが開始されました。他にも『在るものと本質について：ラテン語対訳版』や『法について』など、多くの重要な文献を翻訳しました。

受賞歴

稲垣はその学問的な貢献により、数々の賞を受賞しています。2013年には『神学大全』の翻訳活動が評価され、毎日出版文化賞（企画部門）を受賞。また、2015年には『トマス・アクィナスの神学』および『存在の形而上学』により第27回和辻哲郎文化賞を受賞しました。これらの受賞歴は彼が示した深い学問の探求に対する社会的な認識を反映しています。

最後に

稲垣良典は、その豊かな知識と情熱を持って教育と研究に貢献し続けました。彼の影響は、今後も多くの研究者や学生に引き継がれることでしょう。中世哲学の理解を深めるための道しるべを提供してくれた彼の功績は、永遠に評価され続けるに違いありません。

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