稲島城

稲島城について

稲島城（いなじまじょう）は、愛知県稲沢市東畑の稲島村にあった日本の城です。この城は、南北朝時代から江戸時代にかけて、二つの異なる時代の城館によって形成されていました。具体的には、久田氏の館が南北朝時代、滝川氏の館が江戸時代にそれぞれ存在していました。これらの歴史的背景を通じて、稲島城の重要性を理解することができます。

歴史的背景

稲島城の起源は『張州府志』をはじめとする尾張藩により編纂された地誌に記されています。建武年間（1334〜1336年）には、大国霊神社の神職であった久田弥四郎とその子息が稲島村に居住し、そこを拠点として地元を治めていました。久田弥四郎の子孫は後に野々部氏を名乗り、江戸時代まで大国霊神社の正神主を世襲していきました。

一方、元和2年（1616年）には、稲島村出身の滝川忠征が尾張藩の年寄（家老）に任命され、6000石の所領を授与されました。彼は稲島に館を築きましたが、当時の一国一城令により、これは正式には城とは見なされませんでした。しかし地元では、この結びつきから「稲島城」と呼ばれるようになりました。滝川氏は当地の水利を改善するために用水路を開削し、稲島を拠点に地域を支配しました。

残念ながら、忠征の曾孫である忠方が宝永2年（1705年）に没した頃、稲島は失領し、これに伴い稲島城も廃城となりました。

再び稲島村との関係が戻ったのは享和3年（1803年）で、滝川忠暁が年寄に任命されたことがきっかけでした。彼は祖先の発祥地である稲島村に再び居住するよう願い出て、土地を与えられました。文化9年（1812年）には、ここに下屋敷を建設し、用水路の改修などを行うなど、幕末まで稲島村を支配し続けました。明治維新後には、この屋敷も廃棄され、明治20年代には子孫が土地を手放したため、その跡地は水田へと変わっていきました。

遺構と現在の状況

滝川忠暁によって再建された下屋敷は、稲島村の本郷集落の北西端に位置し、本郷と真菰原にまたがって約3600坪の面積を持っていました。しかし、遺構はその後水田として消失してしまいました。昭和13年（1938年）には、屋敷跡の西南の一隅に「稲島城滝川下屋敷」の碑が立てられました。この碑はその後、昭和の末まで残りましたが、2000年頃までの間に場所が移され、八龍社南隣の土地改良碑の側へと移動されました。

現在、稲島城の跡地やその遺構は水田となっていますが、稲島城がもたらした歴史的な意義は地域に深く根付いています。

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