稲川くん

GOING UNDER GROUND『稲川くん』

『稲川くん』は、GOING UNDER GROUNDが2011年に発表したメジャー8作目（通算11枚目）のアルバムです。ポニーキャニオン移籍後初のアルバムであり、制作には2年以上の歳月が費やされました。

制作の背景

本作は、2009年の伊藤洋一脱退後、4人体制で初めて制作されたアルバムです。楽曲ごとにプロデューサーが異なり、「LISTEN TO THE STEREO!!」「RAW LIFE」「ベッドタウンズ チャイム」「LONG WAY TO GO」の4曲はヒダカトオル、「所帯持ちのロードムービー」は庄司信也が共同プロデュースとして参加しています。その他の楽曲はセルフプロデュースとなっています。

当初、2011年4月6日に発売予定でしたが、東北地方太平洋沖地震の影響で延期され、4月27日にリリースされました。リリースツアーには制作が間に合わず、メジャーデビュー10周年記念ライブとして「GOING UNDER GROUND 10th Anniversary Tour 2011『Rollin' Rollin'』」が2011年2月5日から5月4日まで開催されました。ツアーファイナルでは、元メンバーの伊藤洋一がサプライズゲストとして登場し、「グラフティー」を演奏しました。

タイトルと収録曲

アルバムタイトルとなった楽曲「稲川くん」は、完成が間に合わず収録が見送られました。代わりに、同曲をアレンジしたインストゥルメンタル曲「Merry Christmas Mr.INAGAWA」が収録されています。「稲川くん」は、次作のアルバム『Roots & Routes』に収録されました。

ボーカルの松本素生は、収録を見送られた楽曲をタイトルにした理由について、「どうしてこのタイトルにしたのか？」を考えてもらうきっかけになれば、と語っています。また、小学校時代の同級生であった「稲川くん」の姿に感じた「何かを肯定して明日に向かって生きていく」人の美しさが、本作に通ずるものであると説明しています。

収録曲は以下の通りです。

1. Merry Christmas Mr.INAGAWA
2. 名もなき夢 〜煩悩青年とワーキング・ママ〜
3. LISTEN TO THE STEREO!!
4. 所帯持ちのロードムービー
5. RAW LIFE
6. ジョニーさん
7. ベッドタウンズ チャイム
8. さよなら僕のハックルベリー
9. 詩人にラブソングを
10. LONG WAY TO GO

楽曲解説

Merry Christmas Mr.INAGAWA: インストゥルメンタル曲。
LISTEN TO THE STEREO!!: 20thシングル。
RAW LIFE: 映画『行け!男子高校演劇部』主題歌。
ベッドタウンズ チャイム: 中澤寛規がポリフォニック・スプリーの「Light and day」風のリフからヒントを得てサビのユニゾンが生まれた楽曲。
さよなら僕のハックルベリー: 洋服の青山のテレビCMタイアップ曲。元メンバー伊藤洋一をモチーフにしており、MVには伊藤も出演しています。
LONG WAY TO GO: 21stシングル。

制作陣のコメント

ドラムスの河野丈洋は、本作の制作において「同世代感」「同時代感」を強く意識したと語っています。また、制作中には16曲程度まで収録候補曲が増えましたが、伊藤の脱退を受けて新しいバンドを始める気持ちで制作したこともあり、「このアルバムでデビューするとしたら」を念頭に置いて曲の選定と収録順の決定が行われました。

ピアノロック風のアプローチを見せる楽曲が多いのは、伊藤に代わりキーボードのサポートに入った大久保敬とHARCOの演奏技術によるところが大きいと言われています。

『稲川くん』は、GOING UNDER GROUNDの新たなスタート地点を示す作品であり、彼らの音楽性の幅広さと深さを感じられるアルバムです。

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