稲村城

稲村城（いなむらじょう）

稲村城は、千葉県館山市の稲に位置していた歴史的な城で、日本の戦国時代に重要な役割を果たしました。2012年1月24日には、南房総市に存在する岡本城と共に「里見氏城跡」として国指定の史跡に認定されています。

概要と構造

稲村城は、館山平野や鏡ヶ浦を見降ろせる位置に築かれ、高さは約64メートルの丘陵の上にあります。この城の規模は、東西・南北ともに約500メートルに及ぶと推定されており、主郭部の東側は削られ、西側の尾根には盛土の跡が見られるという独自の構造を持っています。

伝説によると、文明18年（1486年）に里見義実によって築城が始まり、延徳3年（1491年）にようやく完成したと言われています。しかし、これを裏付ける確固たる証拠は存在していません。ただし、15世紀後半に築かれたと考えられ、歴史的な文献からも、稲村城が里見氏の最初の本拠地である白浜城との連携を持ち、道が整備されていたことが分かっています。これらのことからも、稲村城は当時の里見氏当主の居城であったと認識されており、重要な拠点であったことは間違いありません。

里見氏の飛躍と稲村城の役割

稲村城を本拠地とすることによって、里見氏はその後の勢力拡大に拍車をかけました。この城の戦略的な立地は、周囲の国府一帯を見渡すことができるため、守護の役割を果たす上で非常に advantageous でした。このことは、稲村が進出することで守護支配体制を維持・強化する意味合いを持ちます。しかし、戦国時代に入ると国衙の機能が失われ、里見氏の進出がこのような意図を持っていたのかは議論があります。また、稲村城は古代から安房国内で最も生産性の高い地域に位置しており、周辺水系を管理する重要な拠点でもあったため、館山平野の農業生産において特に重要な役割を果たしたと考えられています。

内訌と稲村城の廃城

天文2年（1533年）から翌年にかけて、稲村城は「稲村の変」と呼ばれる内訌の舞台となりました。これは、里見氏内部で起きた権力争いで、現存する文献の記録と伝承では詳細な経緯が大きく異なることもあります。この内訌によって、4代当主の里見義豊は従兄弟の義堯により滅ぼされ、稲村城はそのまま廃城に至りました。

参考文献

• - 川名登 編『すべてわかる 戦国大名里見氏の歴史』国書刊行会、2000年。
• - 『千葉県の地名』平凡社〈日本歴史地名大系 12〉、1996年。

外部リンク

• - 国指定文化財等データベース
• - 特定非営利活動法人(NPO) 安房文化遺産フォーラム・里見氏稲村城跡を保存する会

以上のように、稲村城は里見氏にとって戦略的に重要な拠点であり、歴史を通じて数々の変遷を辿る興味深い城です。

もう一度検索