稲田又左衛門

稲田又左衛門の生涯

稲田又左衛門（いなだ またざえもん）は、1834年3月1日に肥前国彼杵郡大村（現在の長崎県大村市）で生まれました。幼名は才八郎、後に東馬、又左衛門と称しました。19歳で大村藩士・稲田中衛の養子となり、藩校五教館で学びました。幕末期には大村藩において重要な役割を果たし、明治期には政治家、銀行家として活躍しました。

幕末の大村藩での活躍

1854年（安政元年）に中小姓に任じられたのを皮切りに、諸稽頭取、近習番頭、御用人、長崎御用懸といった要職を歴任しました。さらに、家老兼烈山隊参謀、吾往隊大隊長として藩主大村純熈を補佐しました。これらの役職を通じて、藩政の中枢でその手腕を発揮しました。

明治維新後の活動

廃藩置県後、稲田は西彼杵郡大串村に転居し、地方行政に携わることになります。第二中学大区取締、第十一大区区長、兼第十三大区区長を歴任し、1878年（明治11年）には西彼杵郡長に就任しました。1879年（明治12年）には長崎区長となり、1880年（明治13年）までその職を務めました。地方行政の責任者として、地域社会の発展に尽力しました。

判事補、そして衆議院議員へ

1884年（明治17年）には判事補に任官し、長崎治安裁判所詰となりましたが、1890年（明治23年）に裁判所構成法の施行により廃官となりました。その後、玖島銀行の頭取に就任し、経済界でもその能力を発揮しました。1890年（明治23年）の第1回[[衆議院議員総選挙]]では次点に甘んじましたが、1892年（明治25年）の第2回総選挙で当選し、衆議院議員として1期在任しました。

引退と晩年

1898年（明治31年）には家督を養子英二郎に譲り、隠居生活に入りました。1910年3月3日、病のため大串村で生涯を閉じました。享年77歳でした。稲田又左衛門は、幕末から明治にかけての激動の時代を生き抜き、地方行政、司法、経済、政治の各分野でその才能を発揮した人物として、後世に名を残しています。

参考資料

『衆議院議員総選挙一覧 上巻』衆議院事務局、1915年
『大礼記念長崎県人物伝』長崎県教育会、1919年
『総選挙衆議院議員略歴 第1回乃至第20回』衆議院事務局、1940年
日本歴史学会編『明治維新人名辞典』吉川弘文館、1981年
* 衆議院・参議院『議会制度百年史 - 衆議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年

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