稲葉三右衛門

稲葉三右衛門について

稲葉三右衛門（1837年10月20日 - 1914年6月22日）は、幕末から明治にかけて活躍した実業家で、現在の三重県四日市市の発展に大きく貢献しました。彼は、四日市港の近代化を成し遂げた人物として知られています。旧家である吉田家の出身で、幼名は九十郎、後に利孝と改名しました。その後、廻船問屋を営む稲葉家の養子となり、六代目稲葉三右衛門を襲名しました。

四日市港の築港

当時、四日市港は二度の大地震によって堤防が損壊し、港としての機能を失っていました。この状況を憂慮した稲葉三右衛門は、私財を投じ、四日市港の修築を決意します。しかし、当初は人々の反対や資金不足により工事は難航しました。それでも、三右衛門は諦めず、内務大臣に直談判するなど奔走し、最終的には明治17年（1884年）に四日市旧港を完成させました。

この旧港は、稲葉町の名前と妻たかの名に由来する高砂町で構成されており、外洋との防波堤として桑名城の石垣が転用されました。この堤防は「潮吹き堤防」と呼ばれ、その独特な構造から国の重要文化財にも指定されています。しかし、この築港を強引に進めた背景には、明治政府の富国強兵政策という側面もあり、評価が分かれる点もあります。しかし、四日市が港町として発展した背景には、三右衛門の多大な貢献があったことは間違いありません。

四日市の発展と稲葉三右衛門

稲葉三右衛門の尽力によって近代港湾として生まれ変わった四日市港は、その後、外国貿易港としても発展し、四日市市は三重県を代表する工業都市、経済都市へと成長しました。彼の功績は地元で高く評価され、小学校の教材にも登場するほどです。また、JR四日市駅前には彼の銅像が建てられており、その偉業を今に伝えています。

彼の言葉として有名な「今この海に十万金を投じるのは、後の日の四日市に百万金をもたらさんがためだ」という言葉は、彼の先見の明と四日市への深い愛情を表しています。また、三右衛門は、四日市と敦賀を結ぶ日本横断鉄道構想を提唱するなど、その視野は非常に広いものでした。没後も、その功績を讃える書籍が刊行されるなど、彼の偉業は後世にまで語り継がれています。

稲葉三右衛門のその他の事績

稲葉三右衛門は、単に港湾整備に尽力しただけでなく、明治16年（1883年）には、四日市と敦賀を結ぶ日本横断鉄道構想を提唱し、その実現に向けて尽力しました。この構想は、官営鉄道と民営鉄道の問題から実現には至りませんでしたが、彼の先進的な考えを示すものとして特筆されます。この構想は、現在の三岐鉄道のルーツとも言われています。

まとめ

稲葉三右衛門は、四日市港の近代化と四日市市の発展に大きく貢献した人物です。彼の情熱と先見の明は、今日の四日市の繁栄の礎となり、その功績は今もなお多くの人々に語り継がれています。彼の残した足跡は、四日市の歴史を語る上で欠かすことのできない重要な要素であり、後世に受け継がれていくべき遺産です。

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