積算校費

積算校費

積算校費とは、国立大学における教育研究活動や管理運営にかかる予算を、1999年度まで積算する際に用いられていた基準単価のことです。これは、大学の基本的な組織単位である「講座」や「学科目」を基盤として算定されていました。

概要

新制大学が誕生する際、旧制大学や専門学校、師範学校など多様な背景を持つ高等教育機関を統合・再編成する必要がありました。この時に、異なる出自の大学・学部に共通する予算積算基準として導入されたのが積算校費です。新制大学の骨格を成す講座と学科目に着目し、それらを基に教育研究費や管理運営費を算定する方式でした。

積算校費には、主に研究活動に必要な経費を積算するための「教官当積算校費」と、主に学生の教育にかかる経費を積算するための「学生当積算校費」がありました。教官当積算校費は、各大学・学部に設置された講座や学科目の数に応じて算出されました。一方、学生当積算校費は、学生の種類（学部生、大学院生など）とその数に応じて算定されました。なお、教官の研究旅行にかかる経費については、積算校費とは別途単価が設定され、予算が計上されていました。

教官当積算校費の単価は、その対象となる組織形態によって異なりました。講座制、特に博士課程講座の場合は「一講座あたり」の単価が適用されました。一方、学科目制の場合は「教員一人あたり」の単価が基準でした。1960年代に入り、学科目制の理工系学部が修士課程講座に改組された際には、教官当積算校費に修士課程の単価が設定されましたが、これは学科目制と同様に教員一人あたりを基準とした単価が適用されました。

各大学に配分された教官当積算校費は、必ずしもその全額が、それぞれの講座や学科目に研究費として直接配分されたわけではありませんでした。大学本部や学部は、共通の管理運営に必要な経費を一定割合で控除した上で、残りを各講座や学科目に配分していました。最終的に各講座や学科目に配分されていた研究費は、積算単価から控除された結果、積算単価の半分以下になることも少なくありませんでした。

研究費の積算が講座ごとに行われ、共通経費の控除があったとしても、その控除後の額が各講座に経常的に配分されていたことは、それぞれの講座が自律性を保ち、講座自治や学部教授会自治といった大学運営における自治の仕組みを強固にする上で重要な役割を果たしていました。

格差と廃止

積算校費制度の下では、講座制と学科目制の間で教官当積算校費に大きな格差が存在しました。これが、国立大学間の予算格差の主要因の一つとなっていました。講座には、通常、教授1人、助教授1人、そして助手1～3人（分野によって人数が異なる）といった定員が割り振られていたのに対し、学科目ではそれぞれの学科目に教授または助教授が1名のみ配置されているのが一般的でした。このような人員配置の違いに加え、積算単価にも差があったのです。

積算校費が使われた最後の年度である1999年度の実験系単価を例に見ると、講座制の博士課程講座を基準（1.00）とした場合、修士課程講座は約0.58、学科目は約0.50程度の水準となり、約2倍の開きが見られました。一般的に、修士課程講座の助手定員は博士課程講座に比べて少なかったため、実際の格差はこれ以上に大きくなっていたと考えられます。

この積算校費制度は、2000年度の予算編成以降、廃止されました。代わって導入されたのが「教育研究基盤校費」です。教育研究基盤校費では、教員数および学生数に基づいた一律の単価（従前の修士課程・非実験系の教官単価および文科系学生単価に相当）による校費に加え、大学を単位として積算する校費が措置されることになりました。大学単位で措置される校費については、積算の内訳が示されず、それ以前の各大学の積算校費総額と同程度の水準とされました。このため、積算校費制度時代に存在した大学間の予算格差は、教育研究基盤校費への移行後も引き継がれる形となりました。

積算校費の廃止は、特に各講座に研究費が配分される根拠を曖昧にすることで、講座制という組織形態や、それを基礎とした学部教授会による自治という大学運営方式自体を、急速に弱体化させる要因となりました。

公立大学での準用

国立大学の予算積算基準であった積算校費は、公立大学の予算積算においても準用されるケースが多く見られました。積算校費が廃止された後も、一部の公立大学では現在も1999年度当時の単価を準用し続けているケースが存在します。

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