穴 (1960年の映画)

『穴』(Le Trou)は、1960年に公開されたフランス映画であり、ジャック・ベッケルが監督を務めた作品です。本作は、1947年にパリ14区に位置するサンテ刑務所で実際に発生した脱獄事件を題材としています。事件の実行犯の一人であるジョゼ・ジョヴァンニが1958年に発表した小説を原作としており、そのリアリティと緊迫感が映画全体を覆っています。

特筆すべきは、ロラン役を演じたジャン・ケロディもまた、実際にこの脱獄事件に関与した人物であるという点です。彼の存在が、映画にさらなる深みと真実味を与えています。また、監督のジャック・ベッケルは、本作の公開を目前にした1960年2月に亡くなっており、『穴』は彼の遺作となりました。

物語は、サンテ刑務所に収監されている4人の囚人たちが、長年計画してきた脱獄計画に、新入りのガスパルが加わることから展開します。当初、4人はガスパルを警戒しますが、協議の結果、彼を脱獄メンバーの一員として受け入れることにします。脱獄のために穴を掘り進める中で、5人の間には徐々に固い絆が芽生えていきます。

しかし、脱獄決行の前日、ガスパルは刑務所長に呼び出され、釈放されることを告げられます。この予期せぬ事態が、5人の運命を大きく狂わせていくことになります。果たして、ガスパルは仲間たちを裏切ってしまうのか、それとも共に脱獄を試みるのか。物語は、最後まで緊張感に満ち溢れています。

登場人物

ガスパル：マーク・ミシェル (野沢那智)
ロラン：ジャン・ケロディ (大木民夫)
ジェオ：ミシェル・コンスタンタン (小林清志)
マニュ：フィリップ・ルロワ (中田浩二)
ボスラン：レイモンド・ムーニエ
ニコール：カトリーヌ・スパーク

( )内は日本語吹替（初回放送1968年12月1日『日曜洋画劇場』）

『穴』は、単なる脱獄映画としてだけでなく、人間関係の複雑さや、絶望的な状況における希望、そして裏切りといったテーマを深く掘り下げた作品です。ベッケル監督の緻密な演出と、俳優たちの迫真の演技が、観る者を物語の世界へと引き込みます。ラストシーンの衝撃は、観る者の心に深く刻まれることでしょう。

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