穴薬師古墳 (五霞町)

穴薬師古墳

穴薬師古墳は、茨城県猿島郡五霞町川妻に位置する古墳時代後期から終末期にかけて築造された円墳です。利根川と権現堂川に挟まれた沖積地にあり、茨城県指定史跡となっています。

概要

古墳は直径約30メートル、高さ約4メートルの円形で、周囲には幅約5メートルの周濠が巡っています。埋葬施設として特徴的なのは、南東方向に開口する複室構造の横穴式石室です。この石室は、磚状（レンガ状）の軽石を積み上げて構築されており、奥壁には五輪塔を思わせる板状の石が用いられるなど、特異な構造で知られています。

石室内からは弘安4年（1281年）銘の板碑が発見されているほか、かつては金銅製の薬師像が安置されていたと伝えられています。古墳の名前「穴薬師」も、この薬師像に由来すると考えられています。

『利根川図志』には、この古墳に関する「隠れ膳椀」の伝説が紹介されています。これは、古墳に隠された膳椀が、必要な時に現れるという不思議な話です。また、1966年（昭和41年）には、古墳の保存整備事業に伴い発掘調査が実施されました。

現在、石室内への立ち入りは制限されていますが、古墳の北に位置する川妻寺には薬師如来像が安置されており、古墳の薬師信仰との関連性も指摘されています。

遺跡歴

弘安4年（1281年）：石室内に板碑が安置される。
江戸時代：『利根川図志』に「川妻隠里膳椀図説」として紹介される。
明治期：吉田文俊が『考古界』に発表する。
1966年（昭和41年）：保存整備事業に伴う発掘調査が実施される。
1970年（昭和45年）：復原される。
1971年（昭和46年）3月29日：茨城県指定史跡に指定される。

埋葬施設

横穴式石室は、全長約7メートルで、玄室（奥室）、前室、羨道からなる複室構造です。各部屋の規模は以下の通りです。

石室全長：約7メートル
玄室（奥室）：長さ約6メートル、幅約2メートル、高さ約2メートル
前室：長さ約1メートル

石室は、下段に約30センチメートルの自然石を並べ、その上に磚状に整形した軽石をレンガ積みにして構築されています。玄室と前室の間には、幅約30センチメートル、厚さ約10センチメートル、高さ1.5メートルの石柱が両側に立てられています。前室と羨道の間にも同様の障壁が設けられています。

石室の平面形は胴張りで、側壁は内側に湾曲しています。奥壁には五輪塔を思わせる板状の石があてられています。

文化財

茨城県指定史跡

穴薬師古墳 - 1971年（昭和46年）3月29日指定

穴薬師古墳は、その特異な石室構造や、古墳にまつわる伝説など、地域の歴史と文化を今に伝える貴重な史跡です。

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