空席の椅子の記念碑

空席の椅子の記念碑

空席の椅子の記念碑（くうせきのいすのきねんひ）は、アラスカ州ジュノーに設置された重要な記念碑であり、第二次世界大戦中に日系人が強制収容所へ送られた歴史を刻んでいます。この記念碑は、当時ジュノーに住んでいた日系人たちの無念を表現すると共に、戦後彼らが地元に戻った際に支えたジュノー市民の努力を称えるために建立されました。

日系人の歴史と強制収容

アラスカ州での日系人移民の歴史は、19世紀後半に始まりました。日本から渡航した移民たちは、主に漁業や鉱業などの労働集約型産業に従事し、ジュノーでは自営業を営むことが一般的でした。この地域では日系人の人口は少なく、1941年には約200人に過ぎませんでしたが、彼らは地元の白人住民たちと良好な関係を築き、地域コミュニティに根ざした生活を送っていました。

しかし、1942年に真珠湾攻撃があり、日米開戦が始まります。その影響で、フランクリン・ルーズベルト大統領は大統領令9066号を発令し、特定の地域から日系人を強制的に収容する権限が軍部に与えられました。アラスカ準州は日系人の人口が少なかったため強制収容のリストには含まれませんでしたが、実際には西部防衛司令部がアラスカの日系人の強制収容を決定しました。

その中で、ジョン・タナカという日系2世は、ジュノーでの卒業式を前に特別な待遇を受けることになりました。彼のクラスメートたちは、彼の不在を示すために、空席の椅子を用意しました。これが後に記念碑の象徴となります。

強制収容後の生活

1942年4月、ジュノーの日系人たちは強制収容所への移動を命じられ、ジョンを含む53名は最初にシアトルに送られました。ジョンはその後、陸軍に入隊し、第442連隊戦闘団としてヨーロッパ戦線に従軍しました。戦後、日系人たちは地元の温かい歓迎を受けながら元の生活を再開しました。ジュノーの日系人は、他の地域の同胞に見られるような差別を受けることなく、比較的早く平穏な生活を取り戻したことが記憶されています。

記念碑の設置と意味

空席の椅子の記念碑は、2014年にジュノーのキャピタル・スクール・パークに設置されました。この記念碑は、ジョンの卒業式のエピソードに基づいてデザインされ、卒業式で使われた木製の折り畳み椅子の象徴的な存在が中央に配置されています。記念碑の詳細には、地元の人々の温かさや日系人たちの歴史が刻まれています。

記念碑には、無理やり地域から引き剥がされた日系人たちの悲しみを示唆するために、平和を意味する「平」という漢字が刻まれています。設立までには多くの人々の協力があり、約2年の歳月がかかりました。

最後に

空席の椅子の記念碑は、単に過去を振り返るものではなく、未来に向けた平和の象徴でもあります。ジュノー市民が共に支え合った歴史を通じて、この記念碑は次世代にも語り継がれる大切な存在です。

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